暗黒の時代
第1話
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「・・・」
フォーリシアが唖然としていると、T字路の右側からズシンズシンと、まるで太古に存在した恐竜たちの足音のように地に音が轟いてきた。その音の主に彼女は覚えがあったわけだが。
「リコン?」
「よー、よー」
そこには少女の予想通り同僚のリコンの姿があった。身長は180センチ前後でやや大柄、筋肉質の身体にヘビーアーマーを装着し、その容姿はまるで歩く重戦車のようだった。手には先ほど放ったであろう大口径のヘビーアーマー用の次世代ライフルが硝煙にまみれて握られていた。
「いや、一部始終見てたけど残酷だね。フォリっちは」
リコンがドシドシと少女の方へ歩みながらヘッドシールドを上げると、彫りの深い顔の白人男性が姿を表した。歳は20代なかばだが、見た目はそれよりも高く見られる為、隊の中では老け顔とからかわれている。
「それで人を撃った貴方に言われたくないわよっ」
「ああ、これ?トライアル中のやつを貰ってきちゃった。強いでしょ?」
リコンは屈託の無い笑顔で銃をマシンアームで撫でながらその大口径ライフルについて嬉しそうに講釈を始める。フォーリシアは先までの形相は何処へやら、燐光のように揺らめいた瞳も今では静かに輝いていた。
「そうじゃなくて・・・倫理的にどうか。って事」
「んー、わざと武器渡して反撃で殴り殺すよりかは趣味いいと思うけどねー」
「・・・」
考えを読まれていた。少女は赤面の思いでブラッドの傍からナイフを拾い上げると、気まずさ故かリコンの方を向こうとはせず、亡くなった市民達を、そして自らが殺めた兵隊達を運び、少しだけ距離を取って安置し、両手を組んで短く祈りを捧げた。
周囲を警戒しながら待機していたリコンが不思議そうにそれを眺めている。
「ねえ、フォリっち。毎回思うんだけど、どうして敵も弔うの?」
「そうね・・・」
フォーリシアはあの少年が居た場所に視線を移した。そこには彼が使ってたであろうアサルトライフル、そしてハンドガン、弾薬類が散乱していた。
「少しでも人間でいたいからかな・・・」
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