許容しがたいことは誰にだってあります。
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くことは許されないのかもしれない。
偉大な父という壁を乗り越えられないことを悩んでいたとしたら無責任なことを言ってしまったかもしれない。
美鶴は、気楽な立場で碁を打っている俺とは違うのだから。
「っ……ごめ、俺……」
「いや、すまない、八つ当たりしてしまったな。 俺の実力が不足しているのは事実だ。 俺が強くなれば良いだけだから、気にしないでくれ」
そういって微笑む美鶴にホッとした。 気にしなくて良いというのなら気楽な立場でものを言わせてもらうとしよう。
俺は狼狽えたことを隠すようにニヤリと笑い返した。
「そうだな。 俺に勝てない美鶴が香坂先生に敵うわけ無いんだから、まずは俺を倒さないと」
「ほぉ? 俺を煽るとは良い度胸だ。 今日こそは必ずお前に敗北の味を思い出させてやろう」
そんな軽口を叩きながら碁盤を挟んで向かい合う。
さっそく石をにぎると俺が先番になった。
「黒か、久しぶりだ」
「まさかそれを負けの言い訳に使うつもりでは無いだろうな?」
「はっ、そういうことは一度でも勝ってから言えっての。 それじゃ――」
「「おねがいします」」
挨拶と共に余計なことが頭から消え、思考が、心が明瞭になり澄み渡っていく。
そう、今はこれから紡がれる一局のことだけ考えていればいい、――それ以外は何もいらない。
心から対局以外のことが全て消えた時、俺はガシャリと音を立て碁笥に手を突っ込んだ。
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