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碁神
許容しがたいことは誰にだってあります。
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自分でも驚くほど冷たい声が出てハッとした。
誤魔化すために後ろを振り返り、生徒に対して浮かべるような優しい笑顔を意識して美鶴に笑いかけた。

「山口先生は美鶴が思ってるような人じゃないよ。 そういえば貧乳が好きとか言ってたな。 ちゃんと女性の好みもある普通の人! そういうわけだから、この話はもうおしまい、な?」
「……――分かった。 だが、最後に一つ……もし何かあったらすぐ俺に連絡してくれ。 どこに居ようと必ず――」
「あーはいはい、分かったよ。 なんか困ったことがあったら美鶴に電話するから。 それでいいだろ? そんなことより早く打とうぜ!」

美鶴が渋々とでも一応頷いてくれたので俺も食器を片付け始める。
食器をざっと水につけエプロンを外した後、そっと両腕を擦った。

……あーもう滅茶苦茶鳥肌立ってる。 背中もゾワゾワするし。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
自分が男から恋愛対象に見られるなんてもう生理的に受け付けられない。
ただの美鶴の勘違いなわけなんだから、こんな風に引きずる必要は無いんだけど、そういうことを示唆されるだけで気持ち悪くてすぐに切り替えられない。
だって、そもそも何で男同士でイチャつこうと思えるのか意味不明だ。
どこ触ったって固いだけだろ。
理解できないし、理解したくも無い。
ああもう考えるのもやめよう。
こういうの考えるのは生徒がそっち系に目覚めちゃったのを更生させる時だけで十分だ。

キッチンからリビングに戻りちゃぶ台の周りに置かれた座布団を二枚拾い上げて浮かない表情の美鶴に笑いかけた。

「お待たせ」

ほら、待ちに待った対局だろ?
あんなに俺とリアルで打ちたがってたじゃないか。
俺もさっきのことは忘れて無理にでも気持ちを切り替えよう。
ネットで打つのとリアルで打つのでそう何かが変わるとは思えないけど、それでもリアルでの初対局ってのは何となく特別な感じがする。 
因みに囲碁部のあれはハンデ付きすぎでノーカン。
美鶴と打つのは好きだし、楽しみにしていたのは俺だって同じなんだ。
そんな気持ちを込めて微笑みかければ、美鶴も気持ちを切り替えてくれたのか笑い返してくれた。

「碁盤はこっちの部屋にあるんだ」

そう言って私室へ繋がるドアを開き電気をつけた。
俺の後から部屋に入ってきた美鶴は、俺の部屋を見て目を丸くした。

俺の私室はリビングとほぼ同じ広さで雰囲気もそう変わらない。
ただ、決定的に違う所が一つ。

「……すごいな」
「そーか?」

それは部屋の半分以上を埋め尽くす囲碁の関連図書だ。
部屋を半分で区分けしており、片方はPCが乗った机やベッド、クローゼットがあり、隅には碁盤が置かれている。
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