彼女の家は何処か
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その悔しさから、己が不甲斐無さから、主の心を読み取ってしまったから。
対して白蓮は悔しさを噛みしめながらも涙を流す事は無かった。彼女はこの先の機会に必ずこの地を取り戻す決意を固めていた。
「しかしだ……この地を守る者も必要だ。兵の三割は国境付近の防衛に向かって貰う。現状、あちらの戦況は一進一退。お前達の救援があれば押し返せるだろう。……すまないが私が帰ってくるまで……代わりに守ってくれ」
一人、また一人と拳を包み、兵達は白蓮の想いを受け取った。星も、牡丹も同じように拳を包み、主のせめてもの妥協点なのだと理解し異を唱える事は無かった。
「私の決定は以上だ。国境へ向かう兵はそれぞれの部隊から三割ずつ、残りは私と共に徐州へと向かう。後……これだけは心に留めておけ。一人でも多く生き残るんだ」
続けて指示を出し、全ての兵は主の命に従い動き始める。
その場に残ったのは三人。風が吹き抜ける中で誰が喋るでもなく佇んでいた。
「……必ず、ここに帰って来よう。大陸に平穏を作り出して私達の安息の地を取り戻そう」
沈黙を打ち破った白蓮は二人が頷くのを見て振り返り、最後の戦の準備に取り掛かる。
見送る二人は主の姿が見えなくなってから互いに瞳を合わせた。
「……我らに出来る事をしなければな」
「ええ。分かってると思いますがどんな事が起ころうと足を止めちゃダメです」
「どんな事が起ころうとも、必ず白蓮殿だけは守り抜こう」
彼女達は微笑み合い、拳を合わせてから己が部隊の準備に取り掛かった。
†
今日の行軍が終わろうかという時にその報告は入った。
公孫賛の軍は西へと迂回、この地から逃走する動きあり。
まず初めに報せを聞いて驚愕したのは違う陣で待機していた麗羽と郭図の二人。どちらも白蓮が逃げる選択をするとは露にも思っていなかった。
決死の覚悟を以って最後まで抗い続けるのが彼女の性格のはず。驚愕の先、すぐに指示に移ったのは麗羽であった。
「逃走予測地点の兵との合流、そして三将軍の部隊を散開して向かわせますわ。今のままでは突破されて逃げられる事でしょう。追撃を仕掛け、必ずわたくしの元まで引きずってきなさい!」
郭図は既に告げられた命に舌打ちを一つ。そして己が兵士にある指示を放った。
「――――って事だ。必ず殺さなければ袁家の未来の障害になるだろう。袁紹様の意思とは反するが、これは上層部の決定でもある。お前ら、やり遂げたら死んでも家族には大きな恩賞をくれてやる」
命を聞いた兵達はすぐに動き出す。それを見て郭図は面倒くさそうにため息をついた。
「こんなめんどくせぇ事させやがって……大人しく特攻して来いよなぁ」
どれだけ走っただろうか。どれだけ逃げただろうか。
幾度の戦闘を繰
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