彼女の家は何処か
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うとしたが急な牡丹の声に止められてしまい、白蓮は今度はなんだとため息が漏れる。
何故か一つの書簡を取り出し、するするとひも解いて牡丹はじっと読み始める。待つこと幾分、彼女は急に目に涙を湛えた。
「白蓮様……これは……この書簡は……街の者からです」
「何だと!?」
読み終えた牡丹が持っていた書簡を取り上げて、白蓮はそれに目を通した。
綴られていたのは街の長老の文字であった。
我らの主は白馬の王ただ一人であり、これは街の者全ての総意である。
誇り高き我らが王ならば命尽き果てるまで戦うは詮無きこと。
しかし我らはそれを望まず。命繋ぎてまた主となる事を望む。
憂慮はいらず、民草が心は手折れる事も無し。
白馬の王、仁徳の君の元へ駆けるべし。大陸に平穏が作られるその時まで。
我らが家は白馬の王の御座す場所にこそあり。
昔、短い間ではあるが店長の店で一人の男が行っていた事はなんであったか。各村の長老を集め、全ての民を繋いでいなかったか。
それを男がこの地から離れたからといって無くしてしまうのが白蓮だろうか。
否。努力し、積み上げ、力と為す白蓮は継続を怠る事は無い。積み上げた信頼と絆は民にすら浸透し、やはり影響を与えていた。
そして今、白蓮はその想いを、全ての想いを受け取ってしまった。
白蓮は書簡を持ったまま悩みに悩んでいた。自身の誇りも、生き様も、想いも、簡単に投げ捨てられるモノでは無い。だからこそ臣下の言も跳ね除けた。
「……民も、あなたに生きて欲しいと願っているんです! 臣下も、あなたに生きて欲しいと願っていたんです! そして私も……昨日の夜に言った通りです……」
星は白蓮が手に開いたままの書簡を覗き見て驚愕していたが、気を引き締めて兵達と白蓮の間に膝を付く。
倣って、牡丹も、牡丹の言葉を聞いた全ての兵も膝を付いた。
「我が主。どうか生き永らえてくださいませ。あなたは民の希望なのです。袁家に大陸を渡す事が義でありましょうか。侵略を行う輩が跋扈する世を抑える為には、あなたのような方が死するは今では無いでしょう? どうか、どうか生き抜いて我らが幽州を確実に取り戻して頂きたい」
昨夜、彼女は心を固めていた。主の誇りに唾する事を。己が矜持である主への忠を曲げてまで白蓮の生存の為に異を唱える事を決めていた。
最初から逃走する方が生存率は高い。袁家の斥候の幅は尋常では無い為対応が速く、そして行軍も方々に広がっている為に抜けにくい……というより、それでも足りないかもしれない事を理解してしまっていた。
彼女の明晰な頭脳は主を生き残らせる為にどうすればいいかを既に弾き出していた。
敗走という程度では遅い。奇襲による混乱によって大将首を狙うなど、広がった陣形には対して期待が出来ないのだ。まして
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