彼女の家は何処か
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人であったからだ。
今、彼女が責めているのは自身の無力。誇りに思ってきた自身の存在がちっぽけなモノに思えたから。
星は孤独の中、先程の白蓮とのやり取りで確かめた事を思い出す。
――我らが家はどこにある。
はらはらと涙が落ちるのもそのままに、自身の考えを深めて行く。
――私達の家は……ここであると同時に……。
思考を止めた所で涙をグイと拭い、力無く笑った。
「そうだ。私の、白蓮殿の、牡丹の、秋斗殿の、皆の愛する家は……」
彼女は初めて自分の掲げる一つの矜持を曲げる事を決心した。
†
明くる日、朝の光が目に眩しい時刻のこと。
公孫賛軍は全ての兵が整列していた。湛えた瞳は力強く、命の篝火を煌々と燃やし、鋭い光には決死の想いが見て取れた。
腕を組み、厳めしく眉を顰めて全ての兵をぐるりと見渡し、次いで白蓮は表情を崩した。
――皆の想いが伝わってくるようだ。
自身と同じように守る事に命を賭けてくれる全てに感謝して、一つ目を瞑って自身の想いも確かめ始める――――
「牡丹、昨夜はお楽しみでしたね」
「……星、ちょっと黙っていて下さい。私は白蓮様の凛々しいお姿をこの目に焼き付けるのに忙しいんですそうですこの戦でもそれはもう数多く見て来たし何時如何なる時も美しく凛々しく気高いのは分かりきっている事ですがこの時のこの瞬間の白蓮様は今しか見れないんですならどんな白蓮様も私の脳髄に保存しておかなければいけません後々白蓮様に出会えた事を感謝しその奇跡を噛みしめてみればああもう私はなんて幸せなんでしょうそうです白蓮様がいれば世界が幸せに包まれるのは当たり前の事でしたねそれなら全ての者が白蓮様に跪けばいいんですそうですねそうしましょうそれが一番の方法で「もう! 何も! 喋るな!」あぅ! ありがとうございます!」
――――事など出来はしなかった。
振り返って怒鳴ると最前列の兵達の苦笑が背中越しに聞こえ、白蓮は恥ずかしさに顔が少し火照った。
――人が感慨に耽っている時にこいつらと来たら。
白蓮が恨みがましい目でじろりと二人を睨むと、
「クク、よいではないですか。いつも通りの我らのいつも通りの出撃。気負う必要も、特別な事もいりませぬ」
手で口を塞ぎ続ける牡丹の頭をぐしぐしと撫でた星はにやりと笑う。
「普段通りの、我らの好きな白蓮殿のままでいればよいかと」
「お前は全く……一理あるか。堅苦しくてもいけないな」
ふっと微笑みと言葉を返して白蓮は前を向く。星なりの心遣いに感謝しながら。しかし後ろで表情の変わった者が一人。少しでも心を緩めたことによって己が意見は通り易くなっただろうとみて星が口を開こうとしたが……突如、牡丹が声を上げる。
「あ! 白蓮様、少しお待ちください!」
兵に出撃の為に語りを行お
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