彼女の家は何処か
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れはじめる。星は目を瞑り私の話に耳を傾けていた。
「お前にはずっと世話になってきた。感謝こそすれ、どうして責められる? 自責に心を沈めるのは分かるが、こんな時だ。私の好きな、元気なお前の明るい笑顔が見たい」
そんな言葉しか出てこない自分を少し残念に思う。私は秋斗のように泣いてる者に対して上手く語れないようだ。
「ぐすっ……白蓮様ぁ!」
「おっと! ……ふふ、ありがとうな、牡丹。私の代わりに背負おうとしてくれて」
私なんかの言葉で感極まってくれたのか抱きついて来たので膝の上に乗せてやり、抱き合う形で背中を撫でる。
その様子を見て星はやれやれと言う様に苦笑し、何故か酒瓶を手に取って耳を当て、
「何々? ほうほう、こう湿っぽい雰囲気の中で飲まれる事は嫌だ、と。ふむ……お目が高い、私に寝酒として飲まれる事こそが本望とそう言うのか」
おどけた調子で一人芝居を始めてしまった。
「そこまで望まれては致し方ない。白蓮殿、戦の前夜でありますし酒宴の続きは勝ってからゆっくり店長の店で、として頂けるとありがたい」
言うや私ににやりと笑った星は立ち上がり、すたすたと天幕の入り口まで酒瓶を持って歩いて行き、ピタリと足を止めて、
「……我らが家はどこにあるのでしょうな?」
背を向けたまま一つの問いかけを放った。何を言っている。答えなんか分かりきってるじゃないか。
「私達が守る幽州の地に」
「……クク、まさしくその通りでしょう。ではおやすみ。……牡丹よ、戦の前に心も体もすっきりとしておけ。白蓮殿も王ならば受け入れてくれるだろうし、暴走せずに落ち着いたままで素直になるがいい」
ゆっくりと歩みを進めて星は出て行く。牡丹に気を使ったのか。さすがに鈍感な秋斗じゃないからその意味する所は分かる。
分かったと同時に私の頬が熱くなった。星の奴め、覚えておけよ?
「星の……バカ」
泣きながら照れるという器用な事をしている牡丹の背を撫でつけ、この後どうしたらいいのかと頭を悩ませながら異様な空気の中で時間は流れて行った。
一人天幕を出た星は重苦しい気持ちを抱えて、自身の寝台に腰かけていた。
白蓮と酒宴の約束を取り付けた時、ふいにあの鈍感男の言葉が頭に甦ったから。
『絶対に生き残ってくれ。幽州は、家はそこにあるんだから』
――洛陽での酒宴の夜、彼はそういったのだ。なのに私達は……。
沈んでいく気持ちを無理やり抑え、思考に潜り始める。
全ての者が明日の奇襲は望みが薄いどころか絶望的なのは分かりきっている。三人の誰かが欠けるだけという考えですら甘い。
倍以上どころか今や三倍近い兵に対して籠城も出来ず、方々に放った斥候はほとんどが帰って来ない。救援の手立ても全く無い。
張コウは彼女達の狙い、袁紹を討ち取る事を必
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