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乱世の確率事象改変
彼女の家は何処か
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わり、私の言葉が止まる。
「あなたは優しいです。その優しさは本当に嬉しいのですがもう私達はあなたの為に命を捨てる覚悟は出来ています。命じてください。あなたの為に私の命を捨てろと」
 綺麗な笑顔で哀しい事を告げる牡丹であったが、私の心がそれを拒絶していた。
 いつだったか、ああ、洛陽での戦の時だ。私は桃香に怒ったんだったな。
 そして今の状況は間違いなく自分達が全滅しそうでそれしか手が無い状況だった。
 しかしこんなにも……苦渋の決断を私にしろというのか。
 私を愛してくれるこの大切な者を切り捨てろというのか。
 王としては、決断を下すべきだという事を分かっている。
 戦の経験からも、全滅を避ける事が出来るのはこの策くらいだというのも分かっている。
 牡丹が残ればより確実に将に対して時間稼ぎが出来る事も分かっている。
 それでも私は……

「ダメだ! 今後の為にもお前を失う訳にはいかない! 他にも方法があるはずだ! 認めない、絶対に認めないぞ!」

 牡丹を睨みつけて言い放つと――――私の唇に牡丹の唇が重なった。
 突然の行動に思考が止まり、茫然と少し離れた牡丹を見ると私の好きな元気な笑顔を向けてくれる。

「ふふ、絶対にそう言ってくれると思ってました。でも知ってるでしょう? 私は白蓮様が――――大好きなんですよ。お願いします白蓮様。あなたの命令で、あなたを救わせてください」
 続けて膝を付いて言われて気付いてしまった。
 こいつは私が命じなくてもそれをするだろうと。兵も同じ覚悟を持っているのだから彼らが牡丹を止める事は無い。
 星の方を見ると、苦い顔をしながら目を瞑って耐えていた。牡丹の言う策には今の星よりも適している事を理解しているから、そして何よりも牡丹の心を守りたいが為にだろう。
 もはや私には選択肢が残されていないのだ。
 今、私に出来る事はたった一つだけなのだ。
 涙が零れそうになる。足が震えて膝を付きそうになる。気を抜けば喚き散らしてしまいそうになる。
 でも、それら全てを抑え付けて表情を引き締めて牡丹の方を向く。せめてこいつの好きだと言ってくれた凛々しい私でありたいから。
「我が忠臣関靖とその部隊に告げる。本隊の逃走時間の確保の為に捨て奸の実行を命ず。命を賭して成功させよ」
 御意、の一声の後に牡丹が寄り、耳元で囁いてきた。
「ありがとうございます白蓮様、愛しています」
「生きて私に会いに来い。死ぬなんて絶対に許さないからな」
 無茶な事であるのは分かりきっている事を囁くと、身体を離し、笑顔だけを返して牡丹は星に近付く。
「任せましたよ、星」
「ふふ、お前の帰る家は守り抜くさ。秋斗殿も一緒だからお前にとっても嬉しい事だろう?」
「そうですね。腹立たしい事ですが私はあいつの事も好きな
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