第二章
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第二章
「ま、まあこれはあれや。ちょっと空気が汚れてたさかいな」
「それ、確か俺の」
「何ていうかな。こういうのがあってもええんちゃうかって思ってな」
こう言い繕う野村であった。しかもその空気清浄機は奇麗に掃除されていた。広澤はそこまで見てだ。やれやれといった顔で微笑んだのだった。
野村克也という人はサインをせがまれる。するとわしを誰やと思うてるんや、他に誰かおらんのかと言いながらもしっかりとそこにいる全員のサインをしてくれる。そしていらんといった相手を自分のチームに入れたりもする。実はそうした人なのである。確かに口は悪いがその実はこうした人物なのである。だからであろうか。この人を好きな人も多い。何処か親しみを持ってだ。この人を見て語るのである。少なくとも野球を心から愛し多くの尾羽打ち枯らした選手を引き取り再び活躍させた、そのことは紛れもない事実である。
こうした人だからこそ楽天の監督として有終の美を飾れたのだろう。最後の胴上げはこの人に相応しい胴上げであったと言えよう。確かに敗れはしたがそれでも妙に清々しい。憎まれ口を叩きながらも困っている人を放ってはおけず何かと贈られると何だかんだと言いながら大切に使いサインには結局必ず応える、何を言われても意に介さないようでいて実は繊細である、この人のことをわかっている人はだ。どうしても嫌いになれないのである。
ツンデレノムさん 完
2011・4・8
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