第四章
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第四章
ボールは一直線に飛びライトスタンドに突き刺さった。最初は誰もが呆然となった。
「なっ・・・・・・」
「本当に・・・・・・」
「打ったっていうのか」
「ルースは・・・・・・」
誰もが唖然となった。しかしボールは確かにライトスタンドにある。ルースは打ったのだ。
「ホームランです!」
アナウンサーが思わず叫んだ。
「ホームランです!ルース打ちました!」
「お、おい!打ったぞ!」
「ああ、打った!」
「ルースは本当に打ったんだ!」
誰もが立ち上がって叫んだ。
「まさか。予告した通りに打つなんて」
「こんなこと見たことあったか?」
「いや、ない」
「はじめてだ」
野球がはじまって以来だ。しかしルースはそれをやったのだ。
彼はダイアモンドをゆっくりと回る。そしてホームベースを踏んだ時。
敵も味方も彼を歓声で包んだ。彼は奇跡をやったのだ。
「ルース!」
「凄いぞ!」
「よくやった!」
歓声はそのままラジオを流れる。男の子もそれを聞いていた。
「凄いや、ルース」
彼は泣きながら一人呟いた。
「打ってくれたんだ、ホームラン」
約束通りである。本当に打ったのだ。
「僕の為に」
それがわかったのだ。そして彼は決めた。
「僕も頑張ろう」
このことをだ。
「そして手術を受けるんだ、頑張って」
そのことを決意したのである。彼のホームランを聞いてだ。
この後随分と後になっての話だ。引退し身体を崩していたルースにこの男の子が会いに来た。彼はもう立派な青年になっていた。
その彼がだ。笑顔でルースに言うのだった。
「貴方のおかげです」
こうその彼に告げたのである。
「貴方のホームランのおかげで今の僕があります」
自分で立っていてそのうえでしっかりとした顔で笑っている。あの弱々しい子供の頃の姿は何処にもなかった。彼をそういうふうにしたのは紛れもなくベーブ=ルースその人であった。彼のホームランが一人の男の子を救った、野球史に残っているあるエピソードである。
予告ホームラン 完
2009・12・14
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