第三章
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第三章
「君にね。それじゃあ」
「・・・・・・はい」
「じゃあ約束しよう」
ここまで話すとだった。ルースは自分の右手を差し出してきたのだった。
そして男の子の右手を握りだった。微笑みを戻して彼に告げた。
「君の為にホームランを打つとね」
「ルースさん・・・・・・」
「次の試合に絶対に」
彼はまた言った。
「打つからね」
「・・・・・・わかりました」
男の子はルースのその言葉に頷いた。こうして約束が交わされた。そして次の試合だった。ルースはいつもの様に三番で出場した。
しかしであった。彼は不調のままであった。そしてこの試合もまた。
「まずいな、ルースの奴」
「ああ、今日もな」
「調子が悪いな」
ヤンキースの選手達も観客達も苦い顔になっていた。
「三打席共三振か」
「全然駄目だな」
「こりゃ今日もな」
「いや」
しかしだった。彼のマネージャーだけが違っていた。彼はこの試合のルースを冷静に見ていた。
そして言うのだった。こう。
「彼は打つよ」
「打つって!?」
「絶対に!?」
「三振でもこれまでの不調の時と振りが違うよ」
それが違うというのである。
「まるで台風だ。これなら」
「いける!?」
「いけますか」
「うん、いけるよ」
今は守備についている彼を見ての言葉だ。彼は外野にいた。
「この試合はね」
「打つんですか」
「この試合は」
「今日の彼は違う」
それをわかっているからこその言葉だった。
「絶対にやってくれるよ」
「じゃあ見させてもらいますよ」
「いいですね」
周りはマネージャーのその言葉にくってかかるようにして言ってきた。
「そのルースの打つ場面を」
「ここで」
こうして皆彼を見守ることにした。その次の打席だった。
ルースは左打席に入った。そこで。
何と外野スタンドを自分のバットで指差したのだ。ライトスタンドをだ。
「何っ、あれはまさか」
「ホームランを打つっていうのか!?」
「つまり」
それが何を意味しているかだ。これも言うまでもなかった。
「予告ホームランか」
「まさか、絶対に打つっていうのか!?」
「それを言うのか」
誰もがこれには唖然となった。それは両チームの選手達や観客達だけではなかった。
放送するアナウンサー達もそれを聞く者達もだ。誰もがであった。
「まさかルースさんは」
そこには男の子もいた。彼は自分の病室のベッドの中で唖然となっていた。
「僕の為に本当にホームランを打つつもりで」
枕元に置かれているラジオからはアナウンサーの呆然とした声が聞こえてくる。誰もが今の彼の行動を信じられなかった。まさに夢を見ているようであった。
広いグラウンドは静まり返っていた。まさか本当に打つの
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