4章
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もしも、平和という言葉が真実ならば。
どうして私はここにいるのだろうか。
裏切られ、貶められ、疎まれる。
もしも人が救いを求めるというのなら。
オレはこの世界で何ができるのだろうか。
平行世界の魔術とは無縁の世界。未来に奔走し魔術を必要としない世界で―――オレはなにができる――――
「料理?」
「そうだ。できるかときいたんだ」
千冬は日本食に飢えていた。
先日のように市街に出れば日本食は食べられるが、それはドイツ人にとっての日本食。
生粋の日本人であれば、その味に満足は出来ない。味が薄かったり濃かったり、品名と実在の食事が違っていたり。
不幸にも千冬の口に合わない日本食を出した店は不機嫌なオーラを隠しもしない千冬に恐れた。
日本人に味が合わないというのは彼らにとっても驚きだっただろうが、そこにいるだけで帰りたいと思ったのは生まれて初めてだっただろう。
「できるが… 何故だ?」
「作れ」
会話のキャッチボールができていない。こっちはボールを普通に投げ返しているのに、その球を剛速球で投げ返してきている。エミヤシロウは溜息をつくが、ここで少しでも抵抗すると面倒なことになりそうだと判断し、立ち上がる。
こういうことにはなれている。彼のグローブは過去の経験から分厚くできていた。
「要望は」
「まさしく日本食というものを」
それは何でもいいと同義ではないかと思っても口に出してはいけないのだ。
そして知らず知らずのうちに千冬に自分で作れと言う選択肢を選ばなかったことにいずれ心眼があったことに本気で感謝する。
「クラリッサ」
「なんでしょうか、エミヤシロウ」
「ここの冷蔵庫には日本の調味料はないのか?」
「ドイツなので」
あるのはベーコン、ソーセージ、パンなど全て洋食のモノ。米の『こ』の字もあったものではなかった。千冬がいるからあると考えたが、そうではなかった。
シュヴァルツェ・ハーゼの個別隊舎で夕食の準備に取り掛かろうとしたクラリッサ他三名が休憩中の千冬とその暇つぶしの相手をさせられていたエミヤシロウに捕まっていた。
「なに? 元からなかったのか?」
「教官には大変申し訳ないのですがこの隊舎に日本食を作れる材料はありません。知識もなく教官に振る舞うのは愚の骨頂と判断いたしましたので」
「…」
さて、困ったことになった。エミヤシロウはそう思う。
自分が作ることに文句はないのだが、材料がないのでは仕方がない。ここは諦めるしかないだろう。
「残念だが諦め「買ってこい」――――」
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