4章
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「戦略的撤退です。時間を見つけて練習を重ねれば箸は持てるようになります。このままでは食べ終わられた教官を待たせてしまいかねません」
「くっ、私はまたあの男に勝てないのか…」
先日の一件で何かと対抗意識を持つようになってしまったラウラだったが、それを除けば態度は柔らかくなっている。僅かにだが。
ただ、料理で勝負意識を持たれても仕方ない。
「…腕は確かなようだ。美味かった」
「それは良かった。あれほど箸が進んでいたというのに不味いと言われてはどのように反応すればいいかと思ってしまった。」
睨みつけられながら、彼は食器を片づけていく。その手つきすらも手慣れていた。
「エミヤシロウ」
「なんだ、クラリッサ」
「後始末は我々が。料理を作ってもらい、片づけすらもやらせてしまっては我々も立つ瀬がありません」
「…そうか、では宜しく頼む」
「はい。
…後で聞きたいことがあるので、窺ってもよろしいでしょうか?」
少々、歯切れの悪かったが、この程度で追及する必要もない。
了承し、彼は訓練場に向かう。
中佐の一件から監視の眼が強くなった気がしていた。
シュヴァルツェ・ハーゼの面々ではなく、軍の上層部がだ。行動の制限を解除してくれてはいるのだが、今こうしている間にも監視の者以外に誰かが来ている。
黙々と木刀を振るっているだけだというのにそれが恐ろしいかのように見ている者すらいる。
傷はほとんど塞がった。戦闘も余程のことがなければ問題はない。
先日の一件で軍への恩はかなり返したつもりだが、まだ少し足りないかもしれない。こっちは殺されても文句が言えなかった状況であったのに、命を救われこうして生きている。
ずっとここに留まるわけにもいかない。いずれは… 去らなければ。
これから降りかかることは全く予想がつかない。何が起きるかもわからない、どういうことが周りを巻き込むかもわからない。
だが、それを考えるのであれば一刻も早くここを離れるべきだった。そうすれば死ぬのは私だけ。悲しむものも誰もいない。何の問題もない。
『簡単に死ぬことは許さないから!』
「…」
ただ、あの言葉だけがその行動に進むことを拒んでいた。
だが、どうすればいいのか。こうしている間にも…
『少々、構わないだろうか』
声をかけてきたのは軍の上官… ラウラよりも上、政治的にも発言力があるだろうと思われる。
『君は自由になりたいか?』
『自由というのが鳥籠に囚われるという意味でなければ』
ふっ、と男は小さく笑う。
『君のことは大尉の戦闘記録から色々見させてもらった。
織斑千冬よ
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