4章
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その眼は残酷なまでに真剣だった。
「材料も調味料も扱っている店ぐらいあるはずだ。
クラリッサ、部下を率いて市街に買い出しに向かえ。日本食に使える材料と調味料を確保しろ」
「いや、ほとんどわから「了解しました!」――――はぁ」
溜息が出る。
教官という立場とはいえ、こういう形でその権限を使用するとはと思う。
そもそも日本にいたわけでもないのに一目見てわかるはずがない。
大体、それが売っている店すら知らないというのに。
「報告!」
「はい地図をご覧ください!」
数瞬、その間にクラリッサ達は情報を集めていた。
これがシュヴァルツェ・ハーゼの力なの、か?
クラリッサ達が買い出しに出て一時間後。唐突に千冬の携帯が鳴った。
『…日本語が読めません』
予測して然るべきだったかもしれない。
「貴様…!」
エミヤシロウはラウラに睨まれた。
「貴様は我が軍で身柄を拘束されている! それがどこに脱走していた!」
確かにエミヤシロウの身柄は軍で拘束、ということにはなっている。
だが、それは過去の話だ。
「観察房ではなくキッチンにいただけなのだがね。
それとも、君は今日の夕食はなくても構わないと? 千冬の要望に応えずに何もしない私をそのままにできるとでも?」
「…くっ」
ラウラは悔しそうに食堂に椅子に荒々しく座る。
以前よりも行動の幅が広がり、制限と呼ぶものは少なくなってきていた。
先日の一件はあくまで軍内部の騒動ではあったが、それを捕虜とはいえ、止めるのに協力したのだ。何かあっても不思議ではない。
これには千冬も一枚かんでいるのだが、それは千冬と上層部以外は知らないこと。
「一対多で半日以上追いまわされたのだから何かあってもいいと思うのだがね」
ここでエミヤシロウは攻めに転じた。
先日のラウラ達の袋叩きは久しぶりに肝の冷える戦いであり、彼にとってはもう体験したくのない戦いだった。
ラウラを筆頭に眼の色を変えたシュヴァルツェ・ハーゼの全員が襲いかかってくる。ナイフを持ち、死なないように急所を狙わないのはいいのだが倒しても倒してもゾンビのように生き返り、また襲い出してくる面々。
しかも全員が女の子。軍人とはいえ、手荒なことはできずどうしても手加減をするが、意識を絶たない限り生身で相手をするには全くもって面倒この上なかった。
期限ギリギリにはまさにウサギのように眼を充血させて襲ってきた。
これほどに恐ろしいウサギがあってもいいのだろうかと彼は心底思い、この課題を出した千冬を恨んだ。
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