七幕 羽根がなくてもいいですか?
5幕
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「セルシウス。僕たちは君を傷つけるつもりなんてない。だから」
『では今の装置は何だ! 私の自我を犯し、抑えつけ、意のままに操ろうとしたではないか!』
バチバチバチッ!!
フェイは先に編み上げていた拘束術式を発動させ、セルシウスの四肢を縛り上げた。
「フェイ!? ダメだよ、そんな乱暴なやり方じゃ!」
「だってこの精霊、ジュードが一生懸命造ったモノにヒドイこと言った! ジュードだけじゃない、バランさんもおねーさんも、ほかにもたくさん、たくさんの人ががんばって造ったモノなのに!」
たったさっき見たばかりなのだ。時間と労力を費やしてソレを作っていると熱弁を揮ったジュードを。他でもない、セルシウスのような大精霊のために。それを当の精霊が否定した。許せなかった。
「精霊を傷つける物を造った僕にも責任はある!」
「何で!? 精霊を消費して生活するのは当たり前でしょう!? だって、黒匣がないとわたしたち生きてけないもん! 黒匣で精霊殺さなきゃ、フツーの生活だってできないもん! なのに何でジュードは精霊ばっかヒイキするの!」
琥珀色の双眸が信じられないもののようにフェイを見返してきた。
フェイは戸惑う。間違ったことは言っていない。いないのに。
――黒匣使ってたら自然がヤバイとか言うけど無理だしね〜――
――黒匣なしに生活しろとかありえないって――
――断界殻開放したから黒匣使っても精霊死なないんでしょ?――
――大体今さらやめろとか政府も何考えてるわけ?――
――飢え死にしろって話かっつーの――
クラスメートの誰もが言っていた。今は黒匣があるのが当たり前の時代なのだ。フェイ自身、衣食住は黒匣頼りだ。〈妖精〉であっても人間だから、その普遍性には逆らえない。今フェイはエレンピオス国民の意見を代弁したとさえ思っている。
なのにどうしてジュードはそんなにも隔たりのあるまなざしを向けるのか。
『精霊を殺さなければ生きていけない、か。人間はどこまでも業が深い』
嘲るセルシウスをフェイは強く睨んだ。
「あなたたちだって、最初から人間がキライなくせに。フェイにいっぱいイタイコトしたくせに。人間がイッパイ苦しめばいいって思ってるくせに。まだいじめ足りないの? 人間みんながイタイ思いしなきゃ、あなたたちは許してくれないの!?」
セルシウスは苛烈な色となった隻眼をフェイに向けた――が、やがて、ふっと何もかもに疲れたように項垂れた。
『我々が人間と融け合える日はもう来ないのかもしれん。――精霊は人間の道具じゃない。そう思う人間は、もうどこにもいないのか』
パキパキ
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