七幕 羽根がなくてもいいですか?
4幕
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氷の大精霊。それを見守る女性と、男が二人。フェイ自身も知る、観察対象を観る目をしている。
何よりフェイが受け入れがたかったのは、氷の大精霊セルシウスが、女性の前にある小さな機械のせいで悶え苦しむ姿だった。
(だって精霊はイジワルで、人間がキライで、人間みたいにイタがったり苦しがったりしない生き物なのに)
「ジュード!」
「バランさん、状況は」
「見ての通り。試作源霊匣で大精霊セルシウスを制御しようとして、この有様。ここまでやったら強制的に装置を停めるほうが危ない。しょうがないから結果が出るまで見守りに徹してるわけ」
装置が小爆発を起こした。磁場から解放されたセルシウスは、胸を押さえて荒い息をする。
『またか……また私を縛り付けるというのか。こんな機械で、無理やりに!』
顔を上げたセルシウスは、正面で立ち尽くすマキに向けて寒波を放った。
フェイは迷わず間に飛び込み、マキを襲った冷気を光の籠で弾き返した。
「わたしの前で人間をいじめないで!」
薄紅の隻眼がフェイを訝しげに見つめ、そして見開かれた。
『〈妖精〉……お前が? 純エレンピオス人なのに霊力野が退化しなかった人間?』
フェイは答えず次の術式の準備に入っていた。この精霊が後ろの女性に害成すモノなら、フェイはそれを阻まなければ。それが、霊力野を持ったエレンピオス人であるフェイがすべきこと。分史世界のニ・アケリアで、フェイが見つけた答えの一つだった。
緊張していると、ジュードがフェイの前に立ち、セルシウスの前に立ちはだかった。
(わたしは算譜法が使えるのに、ジュード、わたしを守ってくれるんだ)
「フェイ、マキさんを向こうに」
「うん」
フェイはセルシウスに背を向け、マキの両肩を押して男たちがいるほうへと歩き出した。蒼白なマキを、バランと呼ばれた男に預けた。
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