第二話 「宇宙の彼方にカレーパンを」
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」
地球では一般的なものがひとたび成層圏を抜けると、とたんに高級品に。宇宙人の感性はよく分からない。
「カレーパンの何が宇宙人を惹きつけたんだ……」
「しかし販路を広げようにも、地球は宇宙連邦にも加盟してない発展途上惑星。我々宇宙人の存在を公表して混乱させることは、現在の宇宙法では許されない。だから、今は厳しい監視の下、ごく少数の地球産カレーパンのみが流通しているはずなんだ」
地球人が宇宙人を確認できない理由の一つはカレーパンにある。
知りたくない真実を、またひとつ知ってしまった。
「なるほど、まあそれ程高級品なら、密輸する奴も出てくるわな」
「冬二、問題を軽く考えてないか?これは経済的な問題だけではない。もし宇宙人によるカレーパンの密輸が地球人にバレてしまったら、地球は大混乱になるかもしれないんだぞ」
確かにそれは問題かもしれない。密輸がバレるということはすなわち、宇宙人の存在が知られてしまうということでもあるからだ。何の準備もなくこの事実が世間に出たのなら、地球の混乱は間違いないだろう。
しかしそれ以上に、カレーパンによって大混乱に陥った惑星という、不名誉な称号を得るのは、地球人としてはできれば避けたい。
「しかも校内のカレーが買い占められているところを見ると、どうやら犯人は学校関係者の可能性が高い。生徒に紛れ込んでいるということも十分考えられる」
春香が説明したとおり、おそらく犯人は学校関係者なのだろう。
売り切れ状態ということはつまり、誰かの手によって買われた証だ。学外の人間が購買を利用したという話は聞いたことがないし、教員も昼食は食堂を利用する。
「冬二、ここから先は宇宙刑事の仕事だ。犯人の追跡、確保には危険が伴う。宇宙刑事として一般人を巻き込むわけには行かない。君は購買で買い物をしたらすぐに教室に戻って――」
「……」
――どうやら、宇宙刑事というものを誤解していたようだ。
刑事の前に宇宙がつくものだから、ファンタジーで現実味がなく、彼女がお遊びで宇宙刑事をやっているのではという思いも、少なからずあった。
しかし、先ほどの話を聞く限り、どうもそうではないらしい。
地球の刑事や警察官と同じように、その業務には危険が伴い、下手をすれば殉職の危険だってあるかもしれない。やっていることは地球のそれと、何ら変わりないのだ。
でも、それでも彼女の力になりたいと思った。
常識はずれの行動で場を引っ掻き回したと思えば、ほんの少しだが、心の弱い面も覗かせる。
そんな姿を見せられたら、どうしようもなく支えたくなってしまった。
宇宙刑事だなんだといっても、中身は外見どおりの少女なのだから。
「――俺にも、協力させてくれないか?」
「冬二……」
春香は驚いた様子でこちらを見る。
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