第二話 「宇宙の彼方にカレーパンを」
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ないよ」
「何も無いってお前、一緒に住んでるんだろ?いとこだったら結婚できるんだから、やらなきゃ損だぞ!」
「朝っぱらから下ネタかよ……」
幹也とそんな下らない話――いつもの日常に浸っていると、ホームルームのチャイムが鳴った。
「おっともう時間か、冬二、また後でな」
「お〜う」
クラスメイトが席に着き始めると、いつもどおり、先生が入ってきた。
「え〜皆さんおはようございます。今日はですね〜突然ですが、また転校生を紹介します」
「へぇ〜転校生……って転校生?!また?!」
クラスがざわめきで満たされる。女子は「イケメンだといいなぁ〜」などと言い合い、男子のほうも「可愛い子がいいな〜」と顔を緩ませる。
嫌な予感がする。あの事件から1週間後ということは……。それだけで、嫌な予感がしてきた。
「皆さん静かに。おーい君、入ってきなさい」
「はい」
返事と共に扉が開き、転校生が入ってくる。
転校生は教壇の横で立ち止まり、教室を見渡す。
「んじゃ、自己紹介を」
予想は的中。そこにいたのは――
「アランシア・カスペーゼです。よろしくお願いします!」
低い身長に亜麻色の長い髪。少し幼いながらも端整な顔を持つ、アランシアだった。
教室は再び、男子と女子のざわめきで埋め尽くされる。
「きゃー何あの子!カワイイー!」
「外国人かな?すっげー綺麗ー!」
幹也どうしているかというと、手を合わせ、涙を流しながらアランシアを見ている。
「神よ、この奇跡の出会いに感謝します……」と、そんなことを思っているのだろう。
教室の喧騒が少し落ち着くと、アランシアはこちらを見て、クラスメイトの目もはばからず言った。
「冬二さん!約束、覚えてますよね?」
転校生が突然名前を出してきたことで、クラスの全員がこちらを見る。
春香だけは例外で、微笑みながら、握りこぶしに親指を立てていた。
「や、約束?って何だっけ……?」
そう言うと、アランシアはこちらに駆け寄り、両手を取って、晴れ晴れとした笑顔で答えた。
「カレーパン、毎日食べさせてくれるんですよねっ!」
青春に混ぜたスパイスが多すぎたようだ。
日常は当分、戻って来そうにない――
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