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少年少女の戦極時代
第55話 脱出A ドライバー奪還
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 咲たちはビルを出る前に戦極凌馬のオフィスへ向かった。目的は自分たちの戦極ドライバーを取り戻すこと。

 幸いにもオフィスには凌馬も湊もいなかった。
 自分のドライバーとロックシードを取る紘汰と戒斗に倣い、咲もドライバー、そしてドラゴンフルーツとヒマワリの錠前を取り返した。

「おい。お前、どうしてDクラスの錠前を持っている。インベス用か?」
「べつに。ただ、なんとなく、いつか使えたらなって思っただけ」

 数あるロックシードの中で、これ一つだけが実をつけない花の種。自分の名前が「咲」だからか、花であるこのロックシードに親近感を持っていた。

(光にまっすぐ向かう花。ロックシードの中では確かに最低ランク。でも、小学生のあたしたちでさえビートライダーズになれたんだもん。いつかこれだって咲くかもしれないから)

 けたたましい警告音が鳴り響いた。咲は思案をやめて顔を上げた。

「バレた!?」
「急ぐぞ!」
「でも今の画像、裕也が…!」
「仕方ないです! 行きましょう!」

 戒斗が走り出し、光実が紘汰を乱暴に引っ張って行った。
 咲は慌てて彼ら殿(しんがり)につく形で、オフィスを脱出しようとした。


「  本当にそれでいいの?  」


 言葉のはずなのに、それはまるで上質な鉄琴の音のように咲の鼓膜を震わせた。
 ふり返る。白い裳裾をなびかせて、一人の女が咲の後ろに立っていた。

「え……舞、さん? 何で舞さんがここに――」


「  あなたは今  運命を選ぼうとしている  」


 黒と赤のオッドアイが、ひた、と咲を見据える。


「  その花を咲かせてしまえば  もう二度と後戻りはできない  」


 花を咲かせる。咲はとっさにヒマワリの錠前を見下ろした。これを、咲かせる?

「――それでもあたしは、帰るって決めたんだ」

 どれだけ闘争の巷に踏み込もうと、血に汚れようと。仲間の下へ帰るために戦うと決めたのだ。
 その道のりの中でこのロックシードを使わねば戦えない時が来たなら、咲は迷わずヒマワリロックシードをバックルにセットするだろう。

 その想いを伝えようと顔を上げた時、――白い女はすでにいなかった。

(な……んだったの、今の。幻覚? はくちゅうむ、ってやつ? 舞さんがこんなとこにいるわけないし。でもあんなそっくりで、てか同じ顔で)

「おいガキ! 早くしろ!」
「ご、ごめんなさいっ」

 考えは一度捨てて、咲は先に行った彼らを追って走り出した。





 咲たちはエレベーターで降りられるだけの階数を降り、タワー地下のどこかの廊下を走っていた。

 初瀬の時と同じで、紘汰たちと咲では歩幅に差がありすぎる。だがそんなことを言っ
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