第52話 DJサガラの訪問
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刑事もののドラマで見るような独房に連れて来られた咲は、ベッドの隅で枕を抱え蹲っていた。
インベスになった初瀬、戦極凌馬が語ったヘルヘイムの果実の効能と、戦極ドライバー開発の経緯、次のドライバー開発への協力――次々に頭に浮かんでは沈む。考えがまとまらない。
そんな時だった。陽気な声が飛び込んだのは。
「ハロー、Super Girl!」
「ひゃっ! ……え? DJサガラ!? なんでっ?」
サガラはまるで学校帰りに遊びにきた友人のように気さくに、あっさりと、独房の中に入ってきた。彼の手には、ユグドラシル・コーポレーションのロゴが入ったカード。咲もようやく気づいた。
「ユグドラシルの……人だったのね」
「Yes, that’s right! アーマードライダー月花っ」
「そう」
「ん、んー? 意外と驚かないねえ」
「今は、そんなヨユーないから。――ねえ」
「何かな」
「初瀬くんは――死んだの?」
戒斗に初瀬のことを問われた時、紘汰は何も答えなかった。薄々、最悪の結末になったのだろうと分かっていても、聞かずにはおれなかった。
「ああ、死んだ。こっち側のアーマードライダー、シグルドが手を下してな」
「銀色でサクランボのアーマードライダー?」
「ああ。シド、といったほうが分かりやすいか」
「錠前ディーラーが……」
心臓に流れ込む血が一気に冷えた心地がした。どくどくという音が耳の奥まで響いてきて、吐きそうだ。咲は強く枕を抱き締めた。
(今までインベスが死んでこんな気持ちになることなんてなかったのに)
当然だ。その時の咲はインベスの正体を知らなかった。今は知っている。
「ここでやめちまうのかい?」
サガラがベッドの、咲から離れた位置に腰を下ろす。
「知ってるぜ。戦極凌馬から新しいドライバーのテスターに誘われてるんだってな」
咲は答えなかった。率直な考えを述べるなら断じて否である。インベス退治はヒト殺しだと知ってしまった。
もう咲はインベスを倒せない。いや、もう変身することさえ恐ろしかった。
咲とサガラの間に沈黙が降りた。
破ったのはサガラのほうだった。
「あいつは刹那の人生で輝こうとしてる」
「あいつ?」
「葛葉紘汰。アーマードライダー鎧武。奴はこの沢芽シティをインベスから守るために力を使うと言った」
「紘汰くんが……」
それは初瀬のようにヒトから変容したインベスさえ殺すということだ。紘汰はあんなにイヤだと叫んでいたのに。彼は優しすぎるのに。自ら荊の道を往く気なのだろうか。
「……きないよ。あたし、紘汰くんみたいにできないよ……!」
咲は枕を抱え、頭を押しつけた。込み上げてくる嗚咽をサガラに見せまい
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