第七章
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
それは。
「パワーばかりを見ていた。研究していたがそれを忘れてしまっていた」
「私もです」
森もそれは同じであった。彼等はバースのパワーにばかり気を取られてしまっていたのだ。頭脳のことも頭に入れていたつもりだったがそれをイメージの前に打ち消してしまっていたのだ。彼等もまたバースを見誤ってしまっていたのだ。
「手強い男だな」
「そうですね」
森は広岡のその言葉に頷いた。
「予想以上に」
「ですが守備についてはこうはいかないかと」
「そうだな。守りは嘘はつかない」
「そういうことです」
広岡も森も野球においては守備を最重要視する男だ。とりわけ森はそうである。西武の強さの秘密はまる守備力にあった。これは有名な話である。同時に何故今の巨人がああまで無様なのか。答えはその逆だ。守備が悪いからだ。野球を知らないフロントは当然ながら守備力というものを理解できないのだ。だからである。
「機会があれば。仕掛けるぞ」
「わかりました」
この試合は結局バースのアーチが決定打となり阪神の勝利に終わった。問題は第二戦であった。西武の野球はこの第二戦を重要視するものである。
彼等は阪神の隙を狙っていた。何時何処で仕掛けるか。まずは敵の攻撃力は度外視していた。それを見ると戦力を見誤るからだというのがその理由である。
阪神の先発である池田親興は好投する。これは意外であった。
「おいおい、池田やるやんけ」
「こらひょっとしたら」
完封なのでは、阪神ファンはこう思いはじめた。あまりいいとは言えない普段の彼だが今日は違っていた。中々頑張っていたのだ。
それでもピンチは訪れる。三塁ランナーには俊足の秋山幸二、バッターボックスには球史に残る技巧派バッターである辻発彦がいた。そのうえ知将広岡である。何を仕掛けてくるかわからない状況であった。
「何してくるやろな、広岡は」
「そこまではわからんけれどこの場面は大きいで」
阪神ファン達は固唾を飲んで成り行きを見守る。西武球場は緊張に包まれていた。
「さて、その機会が来たな」
広岡は今の状況を心の中でほくそ笑んでいた。彼にとってはシリーズの流れを決定付ける絶好の場面であった。
「ここでの一点は大きいぞ」
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ