第六章
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敵将吉田義男についても言う。
「彼は私より慎重だ」
「監督よりもですか」
「危険な橋は渡らない。だからこそ安心でもある」
それだけに手の内を読んでいるとまで言うのであった。
「そういうことだ。それでは」
「ええ」
「行きましょう、日本一の胴上げに」
「うん」
広岡はまたしても静かに頷いた。そうして彼は痛風でどうにも動きにくい身体で戦場に向かう。彼の痛風についてもまあ色々と言われているがこれもまた彼の意外な人間臭さの部分でもある。
阪神と西武は西武球場で戦闘に入った。観客席は見渡す限り縦縞である。六甲卸しが鳴り響いている。
「おいおい、西武ファンは何処なんだよ!」
「甲子園かあそこは!」
テレビを見て思わず突っ込む者すらいた。そこはまさに阪神の世界であった。
「バースもおるで!」
「おお、おったおった!」
誰もが三塁ベンチにいるバースを見る。それは西武ナインも同じであった。
「大きいな」
「ああ、二メートルはあるな」
実際にはそこまで大きくはないバースを見て口々に言う。それだけ圧倒的な存在感とプレッシャーが彼にあるということであった。
「あんなのの相手か」
「だから守備だろ」
ここで誰かがそっと囁く。
「下手に見て気を呑まれるな」
「そうだな」
そう話し合ってまずはバースからのプレッシャーを避ける。そうしてスターティングメンバーの発表が行われる。
「えっ!?」
「嘘だろ!?」
これに驚いたのは広岡や西武ナインだけではなかった。阪神ファン達ですらそうであった。
「バース指名打者ちゃうで」
「弘田がなっとるやんけ」
ロッテから阪神に移籍してきていた小柄な外野手である。業師として知られている。守備にも定評がありセンターを守ることが多い。
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