第百五十話 明智と松永その十
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「まずは越前です」
「そういうことじゃな、ではな」
こうしてだった、信長は次に進む場を越前そして加賀に決めたのだった。
そのうえでだ、さらにだった。全軍に命じるのだった。
「皆の者、足を速めろ」
「はい、宇佐山城にですな」
「さらにですな」
「急ぐぞ」
こう言うのだった。
「よいな」
「そうですな、与三殿がお待ちです」
ここでも竹中が応える、しかし今度の顔は明るいものだった。
そしてその顔でだ、こう信長に言うのだ。
「猿夜叉殿なら必ずや」
「うむ、あの者とも会おうぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
織田家は宇佐山城に向けてさらに足を速めた、そのうえで森のいる城に向かうのだった。
しかし夜には彼等も休む、信長はこの時はじっくりと休んだのである。
無論その中には松永もいる、彼もまた眠っていた。だがその彼の枕元にだった。
影が来た、それも一つや二つではない。
幾つもの影達が来てだ、そしてこう彼に言ってきたのだ。
「松永よ、まだか」
「まだ動かぬのか」
「今御主が動けば大きな影響が出るぞ」
「それでもか」
「いや、まだでございます」
松永は枕から起き上がってだ、そのうえで影に顔を向けて答えたのだった。
「それは」
「まだ動かぬのか」
「そう言うのか」
「今ここで動いても何にもなりますまい」
これが己の見立てだというのだ。
「そう思いまする」
「では何故そう思う今動いても何にもならぬと」
「それはどうしてじゃ」
「何故そう言うのじゃ」
「それがしの率いる兵は少しです」
だからだというのだ。
「それで謀反をしましても」
「捻り潰されるだけか」
「だからか」
「はい」
松永は影達に答える。
「左様です」
「その言葉信じてよいのだな」
影の一人がだ、松永を見据える様にして彼に問うてきた。
「時が来れば動くという言葉は」
「それがしの言葉を信じぬと」
「信じられる根拠は何じゃ」
「それがしの血です」
それがだというのだ、松永は。
「これで充分ではないでしょうか」
「ふむ」
その言葉を受けてだ、そしてだった。
その影は言葉を一段落置いてだ、こう彼に返した。
「そうだな、我等の血は絶対だ」
「左様ですな」
「はい、ですから」
それでだとだ、また言う松永だった。
「それがしも時が来れば」
「そうじゃな、疑う理由はないな」
「我等は同じまつろわぬ者」
松永は畏まった態度で言う。
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