第百五十話 明智と松永その八
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「そのことが」
「どうしてもですか」
「はい、あれだけ危険な御仁だからこそ」
「普通は信じられませぬな」
「その過去が全てを語っています」
松永の過去、それを見ての言葉である。
「どうしても信じられませぬ」
「ですな」
「だからです」
どうしてもだというのだ、そしてだった。
明智はだ、また言うのだった。
「とにかくそれがしはです」
「断じてですな」
「はい、それがしもまたです」
織田家の他の者達と同じく松永の首を取るというのだ。しかし羽柴だけは彼等の話を聞いてもこう言うのだった。
「小竹も明智殿も」
「十兵衛で結構です」
「では十兵衛殿も」
明智の呼び名を言い換えてだ、そのうえでの言うのだった。
「あの御仁の今を見た方がよいかと」
「今ですか」
「確かにあの御仁はかつてはそうだったでしょうが」
今の彼はというのだ。
「あの方もよい方ですぞ」
「兄上もそう仰いますが」
「何、大丈夫じゃ」
秀長にやはり笑って返す。
「これからもな」
「やれやれ、そうであればいいですが」
「わしはそう見る、まあ根っからの悪人ではないわ」
羽柴だけが笑っていた、そうしての言葉だった。
だが明智の動きは素早い、しかも的確である。彼はすぐに毛利達に話した、するとだった。
毛利達もだ、明智に確かな声で答えたのだった。
「無論我等も承知しております」
「そのことは」
毛利と服部が答える、場には池田もいる。
「あ奴の手に殿はかけさせませぬ」
「それが我等の務めです」
「それがしも軍を率いています」
池田も言う、その彼も。
「ですから」
「そうですな、それでは」
「ご安心下さい」
また言う池田だった、明智に対して。
「我等が目の黒いうちは決してです」
「刺客も毒も防いでみせます」
「例え何があろうとも」
「お頼みもうします」
明智は彼等に頭を下げて述べた。
「是非共」
「はい、それにです」
池田は明智にこうも言った。
「与三殿も戻られますし」
「今我等が向かっている城におられる」
「はい、必ず間に合います」
そうして彼と共に再びだというのだ。
「殿をお守りしますので」
「そうですな、では」
「与三殿のことは間に合いますな」
「はい、我等より先にです」
明智は池田の問いにはっきりとした問いで答えた。
「猿夜叉殿が来られます」
「あの御仁がですな」
「ですから」
明智はこのことについては確かな声で述べた。
「心配無用です」
「そうですな、では」
「急がねばなりませんが」
しかしそれでもだというのだ。
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