第七十四話 実った愛その十三
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「よいご子息ですね」
「えっ、そうでしょうか」
うちの息子はいいでしょうか」
「とても」
そうだというのだ。
「あの子ならこの牧場と娘を任せられます」
「あの、うちの息子は」
どうかとだ、彼の母は驚く顔でこう由乃の父に返した。
「無愛想ですし」
「いえいえ、それは個性です」
「何を考えているかわからなくはないですか?」
このことも言うのだった。
「あの子は」
「いえ、目を見れば」
「目か」
「はい、目です」
そこを見ればいいというのだ。
「言葉で出さずとも」
「そうか、目か」
「それがあったわね」
広瀬の両親もここで気付いた、言葉だけではないのだ。
「目ね」
「それがあったわね」
「そうだな、あの子は確かに無口だがな」
「口だけじゃないわよね」
「目もあったんだ」
「あの子の目を見れば」
ここで彼等は親であるがそれ故の慢心から出た不覚に気付いた、親であってもそれで子供の全てがわかる訳ではないのだ。
そのことをわかってだ、二人は言うのだった。
「それでな」
「あの子のことがわかったわね」
「目は嘘はつけないですね」
由乃の母が微笑んで話す。
「そうですね」
「そして言葉もですね」
「必ず出しますね」
二人も由乃の両親に応えて言う。
「だからですか」
「貴方はあの子の目を見てだったのですか」
「わかりました」
広瀬の考え、そして彼の人間がだというのだ。
「よい人です、ですから」
「あの子を迎え入れて下さいますか」
「この家に」
「そうさせてもらいます」
是非にだとだ、彼は広瀬の両親に答えた。
「それで宜しいですね」
「はい、あの子のことをわかっておられるなら」
「是非」
二人も我が子のことを理解してくれて受け入れてくれるのならそれ以上はないまでに嬉しかった、それでだった。
彼等にこう答えた、そうしてだった。
親達の話も決まった、そのうえで。
二人は大学を無事に卒業したその時に一緒になることになった、広瀬が由乃の家に入る形で、である。そのことをお互いの親達から聞いてだ。
二人はこの上ない喜びに包まれた、バーベキューの場は六人で収められその後でだ、広瀬と由乃はかなり酔っているがそれでも牧場の中を二人で横に並んで散策をしながら話していた。由乃は広瀬に笑顔で言った。
「夢みたいね」
「そうだな」
広瀬もだ、目にその感情を出して言った。
「本当にな」
「そうよね、頬っぺたをつねってみても」
実際にはつねらないがそうしてみてもだというのだ。
「痛くてね」
「夢じゃない」
「そうよね、本当に嘘みたい」
恍惚とした笑顔での言葉だった。
「どうなるのかしら」
「大学を卒業してか」
「それと同時にね」
まさにだ
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