第七十四話 実った愛その一
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久遠の神話
第七十四話 実った愛
戦いから降りた広瀬は猪との戦いのことを思い出していた、場所は大石の教会だ。その教会の中で大石と向かい合って座りそこでその思い出すことを話すのだった。
「信じられない、まだな」
「願いが適うということがですか」
「女神達は約束してくれたがな」
だがそれでもだというのだ。
「本当にそうなるかはわな」
「そうですか」
「あの女神達のことはわかっているつもりだ」
その性格もだというのだ、力だけでなく。
「だがそれでもな」
「果たして貴方の愛が実るのか」
「それはどうなるのか」
「不安なのですね」
「どうしてもな」
その通りだとだ、広瀬は深刻な顔で大石に答えた。
「戦いから降りたがな」
「しかし貴方は猪を倒して」
そしてであった。
「その手には」
「これだな」
「はい、女神の帯を手に入れられています」
二人でアフロディーテの帯を見た、帯は彼の左手に巻かれ続けている。帯ではなくアクセサリーに見える。
「その帯がある限りは」
「安心していいというのか」
「そう思いますが」
これが大石の見立てであった。
「私から見れば」
「神父のあんたが見ればか」
「はい、神は違いますが」
彼はカトリックの神父だ、聡美達はギリシアの神々だ。確かに神は違う。
だがそれでもだとだ、大石は確かな声で広瀬に答えた。
「あの方々は決して嘘は申されないので」
「神である誇り故にか」
「必ずです」
「そうか、それじゃあ」
「もう少しですね」
大石は確信している声で広瀬に答えた。
「待たれれば」
「俺は願いが適うのを見るか」
「そうなります、楽しみにされていればいいかと」
「ならいいがな。だが」
「だが、とは」
「正直ほっとしている」
落ち着いた顔でだ、広瀬はここでこうも言ったのだった。
「誰も倒さずに済んでな」
「それで戦いを降りられてですか」
「願いも適った」
最後にこのことも言う広瀬だった。
「いいこと尽くめだ」
「そうなりますね」
「やはり願いを適えたいからといってな」
「他人を倒すことはお嫌でしたね」
「俺は牧場に入りたい」
由乃と共にだ、だが広瀬は今はこのことまでは言わなかった。
だがそれでもだ、彼はこのことは言ったのだった。
「牧場でも色々とある」
「常に動物達と共にいてですね」
「家畜だ、肉に出すことは常だ」
「そしてその死を見届けることもですね」
「家畜は必要なくなれば処理される」
これが現実だ、のどかなものばかりではないのだ。
「安楽死であろうともな」
「死は常に傍にありますね」
「そうだ、しかしだ」
「それは生きていく中での
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