暁 〜小説投稿サイト〜
神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第六十四章 覚醒せし宿り主《4》
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なりたいと思い、何時かは越したいとも思っていた。
 そんな存在の父親から言われた、別れ際の言葉。
「父様!」
 返事をしようと振り返った。だが、奏鳴の目に映ったものは光が散った後の残光だった。
 そこに父親の姿は無く、何もなかった。
 別れの言葉も無しに。
 父親らしい去り方ではあったが、それは最後まで父親であることを示したかったものだ。
 忘れない。あの時を、そしてこの時を。
「父様……」
 これで皆、家族はいなくなった。悲しくて、また泣きそうになる。
 風が寂しく吹いて、奏鳴の長い髪を撫でる。
 当たり前の日常が家族を失い、変わって、今日まで幾日も過ぎた。長かった。ここに至るまで、沢山の苦労と苦しみを得ながら生きてきた。
 そこに現れたのがセーランだ。
 彼が救ってくれたから前へと進めるようになり、共に生きようと誓い合えた。
 ありがとう。
 皆がいてくれたから、今の自分があるのだ。
 肩を震わせ、堪えようと堪えようと自分に言い聞かせている奏鳴が、一粒の涙を流した。

「大丈夫だ。この俺がいるだろ」

 彼の声。
 セーランの言葉が聞こえた。



 まるで夢を見ていたかのように現実に目を向けた奏鳴。
 正面にいるのはセーランだ。
 青い腕。憂いの葬爪を発動している。
 心配そうに奏鳴を見詰め、そのまま返事を待っていた。
 一粒の涙を拭って、頷き、頬を微かに上げて返事を返した。
「ごめんなさい、迷惑掛けちゃって」
「俺がしたいからしたことだ、気にすんなって」
「セーランのお陰で家族と向かい合えた。その、皆は、ちゃんと逝けたかな」
「ちゃんと逝ったよ。最後に娘のことを頼まれたしな」
 セーランは空を見上げ、大気流れる天空を見詰めた。穏やかな空を上げた顔を下ろし、正面に見える竜神と麒麟を見た。
 釣られるようにして奏鳴も、セーランと同じ光景を目に映した。
 竜神が麒麟に押されているも、なんとか堪えているようだった。
 さすがの竜神も現実空間に実体を現すのと、過去の傷が重なってはまともに力が発揮出来無いようだ。本来の力など見る陰も無い。
「お前が生きたいって強く思っていたから、竜神はなんとか踏ん張れた。でもこのままだと、竜神は負けるぞ」
「竜神は今や私に宿っている。私が力を与えなければ竜神はまともに戦えない」
 ならばどうするか。
 そんなことは既に決まっている。
「だから私が借りた竜神の力を、再び竜神へと戻す。これでいける筈だ」
「確かにそうだけど、問題は力をどれだけ竜神に渡せるかだ。結局人は人だ。あまりにも無理に神の力を扱えば身体がイカれる」
「人は人でも、私は神の血を多く持った神人族だ。神に近い存在ならば、少しぐらい無理をしても平気だろう」
 地を踏み、進んで来る
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ