暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
参拾四 瞬間、心重ねて
[1/8]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
第三十四話



奇跡は二度起こったな。
こんなにあっさりと勝ち越すとは思ってなかった。どうもこの大会、気がついたら点が入ってるってパターンが多い。監督の俺がこんなだから、作戦も何もありゃしないのに。何か大きな力にずっと後押しされているような気がするよ。

それを「勝ちたいという気持ち」で片付けるのは違う気がするな。「勝ちたいという気持ち」なんて、これまで対戦したチーム全てにあった。
しかし、今日まで勝ち残ったのはウチと是礼。
そして今、勝ち越してるのはウチだ。

これがどういう意味を持つのかは分からない。ウチが、ウチ以上に勝ちたいと思ってるはずのチームの上に立つという事が、どういう意味を持つのか。

今は分からない。が、いつか分かるはずだ。
俺も、選手達も。

さぁ、「奇跡」の仕上げだ。
最強かどうかは分からない。
だが、埼玉最高のチームは、
間違いない、俺たちだ!
俺たちネルフ学園野球部だ!



ーーーーーーーーーーーーー


「お前ら!」

11回の裏の守備に出ていこうとする選手達を、加持が呼び止めた。突然声を上げた加持に、選手は皆ドキッとして振り向く。

「いつも通り、最後までだぞ」

その言葉を聞いた日向はキョトンとして、そしてプッと吹き出した。

「先生、そんな事言う時点でいつも通りじゃないっすよ」
「確かに」

周りの選手もうんうんと頷く。
皆笑顔だった。

「いつも通りじゃない事は分かってんだ!この非日常、味わおうぜ!」
「「「オウ!」」」

日向の言葉に大声を上げて、ネルフナインはグランドに駆けていった。

「一本とられましたね」

光がニヤっと笑って、加持を見上げた。

「いつもの事だよ」

加持も笑っていた。



ーーーーーーーーーーーーー



「お前らー!是礼はこのまま負けるようなチームじゃねえよなァー!」
「「「おおーっ」」」
「埼玉で一番練習してきたのはァ!?」
「「「是礼!」」」
「埼玉で一番負けられないチームはァ!?」
「「「是礼!」」」
「じゃ、埼玉で一番最後に笑うのはァ!?」
「「「是礼!」」」


是礼応援席では、応援リーダー長の魚住が声を張り上げる。その煽りに応援団のボルテージがぐーんと高まった所で、吹奏楽部が演奏を始める。

パパパパパパパパーーー?

イントロが響き、応援団全員が腰を下ろす。

「「「お前のっ!出番だっ!」」」

一斉に飛び上がり、右に左に腿上げして踊り始める。チャンステーマの「サウスポー」に後押しされて、11回裏の是礼の攻撃が今始まった。



ーーーーーーーーーーーーー



<11回の裏、是礼学館高校の攻撃は、7番ライ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ