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誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
参拾四 瞬間、心重ねて
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えないよなぁ」

肩をすくめ、健介が呆れたように言う。

「でも何か納得。そう言うと思ってた。」

敬太がジャガイモのような顔を引き締める。

「打たれても同点、って状況で勝負かけないと、俺たちの方がプレッシャーに潰れちまうか。」

多摩はファーストミットをパン、と叩いた。

「伊吹と勝負だ!こいつで終わらせるぞ!」
「「「オウ!」」」

多摩の一言で円陣が解け、内野陣がそれぞれのポジションに散っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーー


「伊吹ィーーッ!」
「お前に任せたーーーッ!」

是礼ベンチに居る全員が身を乗り出して、琢磨に思いを託す。

「打ってェーー!兄さーーん!!」

スコアラーの真矢も声を枯らしていた。
こぼれる涙でスコアブックの字が滲んでいる。

(何も指示はない。男と男の勝負をしてこい。)

冬月は腕組みしたまま、グランドを睨みつける。
是礼の期待を一身に集めて、琢磨が打席に入った。



ーーーーーーーーーーーーーーー


「ハァ…ハァ…」

真司はセットポジションに入った。
肘がジンジンと熱を持って痛む。
腰がキリキリと軋むように痛む。
右の腿裏が痺れるのは、痙攣しているのだろうか。どうにも視界がぼやける。
脱水症状になっているのかもしれない。

(あと…1人!)

そう腹に決めて、真司は投球動作を始動した。
足をグッと上げ、体を捻ってしならせる。
右腕が大きな弧を描いて振られた。

ビシュッ!
カンッ!

鋭く外低めに叩き込まれる速球を初球から琢磨はフルスイング。真後ろに飛んだファウルチップが、バックネットに突き刺さった。

145km/h

スコアボードの球速表示に、バックネット裏から大きなどよめきが起こる。




「まだこんなスピードが…」

ここに来て戻った真司の球速に、是礼ベンチの最上が唖然とする。

「大丈夫じゃ。ちゃんと伊吹と勝負してくれとるけぇ。で、初球から伊吹はついていっとるけぇ。打つで、これは。」

東雲は打席の琢磨を睨む。




バシィッ!
「ボール!」

次の球も外低めの真っ直ぐ。初球と同じほどのスピードだが、これはボール一つ分程外に外れ、琢磨はそれをキッチリと見送った。

(さすが…是礼1の好打者だ……)

もはやボールを捕る左手の感覚がなくなってきた薫は、琢磨の落ち着いた様に感心する他ない。





カンッ!

3球目は三塁側へのファール。
これは琢磨が意図的にカットしたようである。

(……また145か!)

スピード表示を見て、琢磨は苦笑いした。

(でも、自然とついていけてる。球がよく見
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