暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
参拾四 瞬間、心重ねて
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される。
二塁ランナーの脇坂は三塁にスタートを切っている。

「ファースト!」

ファーストの多摩が叫び、健介は目の前に落ちている白球を右手で拾いそのまま投げた。
北上は大きな体で一塁ベースに飛び込んでいく。

「…アウトー!!」

少し間を置いて一塁審の右手が上がる。
ベースに寝そべった形でそのジャッジを見た北上は、その拳を黒土に叩きつけた。

(くそっ!待っていた真っ直ぐだったのに!)

少しだけ頭の中にカットボールがあった分、僅かに差し込まれてヒットゾーンに打球が飛ばなかった。




健介のガッツプレーで、ツーアウト。
ネルフ学園の勝利まで、あと僅かにワンアウト。
同点のランナーを三塁に置いた状況で、打順はこの男に回る。

<1番ショート伊吹君>

是礼の主将。
最も頼れる打者。
伊吹琢磨に。



ーーーーーーーーーーーーーーー


「声援送るよーッ!1、2、3、ハイッ!」
「「がんばれがんばれ碇!がんばれがんばれ碇!」」」

甲子園まであと1人という所で立ちはだかる大きな壁。真理の音頭に応え、ネルフ学園サイドからも是礼応援席の「サウスポー」に負けないコールが送られる。全員が声を枯らし、枯れた声でなお叫ぶ。



玲は両手をぎゅっと握りしめて見守っている。

(勝つか…負けるか…)

玲には、是礼サイドの絶対に負けられないという執念も分かっていたし、その身を捧げるという真司の覚悟も痛いほど伝わっていた。

(どうして…結果は一つなのかしら…)


ーーーーーーーーーーーーーーー



この土壇場、ネルフの内野陣はマウンド上に集まって間をとった。
その間も、是礼の、ネルフの、それぞれの応援席からの、狂おしいほどの願いを込めた大応援は止む事がない。バックネット裏の一般観客も声援を送っている。どちらを応援しているのかは、もはやグランドからは分からないが。

「さて、どうするよ?」

最初に口を開いたのは健介だった。
先ほどまで体に受けた北上の打球の威力にむせ返っていたが、今はすっかり落ち着いている。

「伊吹は1番警戒したい打者だけど、歩かせたら逆転サヨナラのランナーも出る」
「塁に出たら伊吹は盗塁してくるだろうし、二死二、三塁の…」
「打てば是礼の逆転サヨナラ、抑えれば俺たちの勝ち、そういう状況になるだろうな」

敬太、健介と続いた会話の流れを多摩が拾い、そして多摩は視線を落とした。

「碇、お前はどうしたいんだ?」

マウンドにできた円陣の真ん中で、膝に手をついて俯いている真司はハッキリと言った。

「この打者で終わります。」

それを聞いて、他のメンバーに笑みがこぼれる。

「…ほんと、正気とは思
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