16話
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原始的な生存競争そのもの。
恐らく、この戦争において妥協点というものは存在しないに違いない。講和は存在せず、種そのものを殲滅するまで続くのだろう。
森の中を駆ける中、背後から亡蟲の咆哮が響いた。振り返ると、樹々の向こうに亡蟲が立っていた。
速い。筋骨構造が人と相当違うらしい。以前に格闘戦に勝てたのは相手が無手であることも大きいが、主要因は墜落による負傷で相当弱っていた為だろう。この亡蟲との格闘戦において、ボクが勝てる確率はとても小さい、と判断する。
亡蟲がボクの存在を捕捉し、手にした斧を構えて咆哮する。
ボクは咄嗟に周囲を見渡した。外殻に辿り着くまでにラウネシアが説明してくれた樹木の中から、迎撃に最適な樹木を見つけ出す。
亡蟲が斧を構え、ボクに向かって地を蹴った。巨体が真っ直ぐと迫る中、ボクはある樹木に回りこんだ。亡蟲はそのまま距離を詰めてくる。
敵意。目の前の樹木から明確な攻撃意思が立ち昇る。しかし、亡蟲は気づかない。感応能力を持つボクだけが、この樹木が攻撃準備を終えた事を理解していた。
亡蟲が樹木ごとボクをなぎ倒そうと、斧を横薙ぎに振るう。その時、樹木が爆発するかのように燃え上がった。
一般的に植物は火に弱いイメージがあるが、火に対する反応システムを保有する植物、というものが多数存在する。代表的な例はユーカリだ。山火事が起きやすい乾燥地帯に生息するユーカリは、山火事による刺激によって発芽し、成長してからも山火事に対抗する為、樹皮が燃えやすく、すぐに幹から剥がれ落ちる仕組みになっている。
ラウネシアの眷属は、同様に火に対する反応システムを保有し、森全体が焼ける事を防いでいるらしい。しかし、例外が存在する。ラウネシアが罠の一つとして設置している火炎植物。これは外部刺激に対して発火し、爆発にも似た炎上を引き起こすのだ。
一瞬にして燃え上がった炎が、亡蟲を巻き込んで轟々と燃え上がる。息をつく間もなく亡蟲の身体が炎に包まれ、悲鳴じみた咆哮をあげる。
ボクはゆっくりと亡蟲から離れ、その最期を見つめた。燃え上がる炎に耐えかねて亡蟲の身体が崩れ落ちる。炎は収まらない。周囲の雑草が燃焼性の物質であるテルペンを放出し続けているのだ。亡蟲の動きが徐々に鈍くなっていく。
肉が焼ける強い臭いが鼻をついた。ボクは燃え盛る亡蟲から目を離すと、ゆっくりとその場から離れた。
森中を支配していた音が徐々に弱まっていくのが分かった。
火炎植物を含めた多数の植物が、侵入を果たした亡蟲を次々と迎撃しているのだろう。いつの間にか、亡蟲を指揮していた太鼓の音も止んでいる。
『戦いは終息しつつあります。単独でこの外殻を抜けられるほど、私の防衛能力は甘くありません』
ラウネシアの声。
森の中を歩くボ
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