第二章
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第二章
まず動いたのは何処かというと。巨人であった。
このチームの貪欲さは何があろうとも変わらない。それは不変である。
秋山と土井に関してもそうであった。二人を獲得しようと明大に働きかけた。そして話は順調に進み彼等の入団はまず確実になった。
その交渉の際だった。明大側は巨人に対してこう言ったのであった。
「二人一緒の入団ですよね」
「そうですよ」
巨人側のスカウトは横柄に答えるのだった。
「それでいいですよね」
「秋山と土井の両方ですか」
明大側はこのことをまた言った。
「二人一緒ならですけれど」
「何かありますか?」
「よかったら契約金を増やしてくれませんか」
こうスカウトに申し出たのであった。
「契約金を。二人一緒なら」
「何っ!?」
それを聞いた巨人側のスカウトはその言葉を聞いて顔色を一変させた。
「契約金を上積みされようというのですか!?」
「いえ、そういうわけでは」
「そうではありませんか」
スカウトは明大側の言葉を聞こうとはしなかった。
「そんな選手はいりません、この話はなかったことにします」
こう言って話を強引に打ち切ったのであった。これで二人の巨人入団はなくなった。そうして大洋ホエールズに入団することになるのであった。
だが二人はこれを悲しまなかった。むしろ喜びとさえするのだった。
「俺達二人で巨人を倒すか」
「そうだな」
早速最初の巨人戦を前にして巨人側のベンチを見て言い合うのだった。
「俺が投げて」
「俺がリードしてな」
互いの役割もそれぞれ強く意識していた。
「それであいつ等叩き潰すか」
「そうしてやるか」
こう言い合いそのうえで試合に向かう。それからも巨人に立ち向かい続けた。彼等は大洋において巨人に牙を剥く存在となったのだ。
入団したその年に秋山は新人王になった。ハレは秋山だった。だがそのボールを受けるのは誰かというと常に土井であった。
「悪いな。俺ばかり目立ってな」
「おい、そんなこと言うなよ」
ある日居酒屋で二人で飲んでいる時に秋山がこんなことを言った。土井はその彼に対して笑ってこう言葉を返したのであった。
「それじゃあ俺が日陰者みたいじゃないか」
「別にそんなことは言ってないけれどな」
秋山はそれは否定した。
「何しろ御前が俺のボールを受けてくれてだからな」
「だから御前は新人王になれたって言いたいのか」
「ああ、そういうことだ」
秋山が言いたいのはこのことだったのだ。
「御前しかいないからな。俺のボール受けられるのは」
「俺だけか」
「他にはいないさ」
彼はまた言うのだった。
「練習の時でもな。御前じゃないと俺のボールは受けられないんだよ」
「他の奴じゃ無理か」
「ああ、無理だな」
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