第三章
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「その気持ちを歌に込めたよ」
「そうしてくれましたか」
「あの国が友邦で心強いよ」
「伊太利亜もいますし」
「三国でね、これからはね」
「世界の新秩序をですね」
「ソビエトもね」
この国の名前がここから出た、北原の言葉の色はこれまでのものとは違いかなり警戒しているものになっている。
「いるからね」
「あの国はおそらく」
「かなり危険だよ」
警戒の色を隠さない北原だった。
「支那や亜米利加よりもね」
「遥かにですね」
「インテリゲンチャの中には共産主義にかぶれている者が出て来ているね」
「実は当社の中にも」
編集者はここで苦い声を出した。
「いまして」
「ああ、そうなんだ」
「はい、嘆かわしいことです」
「何処がいいんだろうね」
北原は共産主義について疑問を呈した。
「国体を否定して」
「皇室も否定していますね」
「僕には考えられないよ」
全く以てというのだ。
「共産主義なんてね」
「どうもインテリゲンチャは新しもの好きですから」
「インテリゲンチャねえ。インテリといっても」
「それでもですか」
「頭がいいとは限らないからね」
インテリゲンチャ、即ち知識人そのものへの否定だった。北原は難しい顔になってそのうえでこう言ったのである。
「実際のところは」
「知識があってもですね
「常識があるとも限らないし」
それにだった。
「頭の回転がいいとはね」
「限らないですね」
「そうだよ、心が正しいとも限らないよ」
「そこが問題ですね」
「うん、インテリゲンチャが持て囃していても」
「それが正しいとは限らないですね」
「だから共産主義はね」
あらためてこの思想について話すのだった。
「僕は否定するよ」
「そうですね、それでは」
「うん、そうだね」
こう話してだった、そのうえでだった。
北原はナチスとヒトラー、そしてヒトラー=ユーゲントについて言及した。彼等のことはというと。
「ナチスを見るべきだね、これからは」
「それが日本の進むべき道ですね」
「そうだね、デモクラシーよりも」
「ファシズムですね」
「コミュニズムよりもずっといいよ」
こう言ってだった、そのうえで。
北原は自分が書いた歌の歌詞を編集者に渡した、そうして彼に言った。
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