第二章
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「けれどな」
「ああ、蘇ったな」
「ヒトラー総統が出てな」
「ナチス党が政権になってな」
「独逸は変わった」
「蘇ったんだ」
まさにそうなったというのだ。
「今の独逸はどうだ」
「全く別の国じゃないか」
ワイマール体制下の独逸と比べてというのだ。
「凄い国になっているぞ」
「退廃的な空気もない」
これもワイマール体制下でのことだ。
「健全な娯楽、健全な文化」
「健全な生活、健全な家庭」
「健全な学校、健全な職場」
「あんな健全で清潔な国家はないぞ」
それがナチス政権下での独逸だというのだ。
「日本もああなりたいな」
「そうだな、ああした素晴らしい国家になりたいな」
「ヒトラー総統がいる独逸みたいにな」
「ナチス=ドイツの様に」
こう話すのだった、彼等は。
そして出迎えを受けるユーゲント達もだ、礼儀正しく腰が低かった。その青い目には知性と意志の輝きがありすらりとした長身は鍛えられている。
その彼等の話を聞いてだ、北原も言うのだった。彼の目は病でかなり弱っている。それで話を聞いて言うのだ。
「凄い話になっているね」
「そうですね、彼等のことは」
「うん、希望があるね」
こう編集者にも言う、歌の話を持ってきた彼に。
「彼等には」
「そして今の独逸には」
「日本もね」
ここで彼は自身の祖国のことに言及した。
「今は辛いよ」
「支那事変は続いていますし」
「それに亜米利加ともね」
「中々上手くいかないね」
「苦しいですね、全く以て」
「本当にね、ただね」
「はい、それでもですね」
編集者は北原の言葉に笑顔で応えた、それで言うのだった。
「この状況も」
「独逸は日本以上に大変だったんだ」
ワイマール体制下の独逸はというのだ。
「世界恐慌の時はね」
「経済が完全に崩壊しましたからね」
「うん、どうしようもなくなっていたよ」
有り得ないまでのインフレーションに失業率の増加、独逸は完全に絶望の下に叩き落されたのである。これで独逸は終わったと誰もが思った程だ。
「絶望だけだったよ、あの時の独逸にあったのは」
「それがですね」
「そう、一気にね」
まさにだというのだ。
「変わったよ」
「そうなりましたから」
「そう、日本もね」
「一気にですね」
「そう、変わるよ」
今の独逸の様にというのだ。
「変われるんだよ」
「そしてそうなる為の、ですね」
「モデルがね」
範とすべき相手、それはというのだ。
「彼等だよ」
「今の独逸ですね」
「僕はそう思うよ」
北原は考えている顔で編集者に述べた。
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