料理は結構楽しいです。
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失礼します』
やや緊張したような声と共に入ってきた人を見た瞬間、心臓が高鳴った。
着物が似合いそうな、純和風の綺麗な人だった。
中性的というわけでは無く、確かに男だと分かる容姿なのだが、『美人』という言葉がとてもしっくりくる。
男にしては少し長いサラサラとした黒髪が、白く、しかし不健康さを感じさせない肌に良く映える。
眉が八の字に垂れているためか、幸薄そうな守ってあげたくなるような印象を覚えて、慌てて打ち消した。
男相手に何を考えているのかと自分を叱責し、美鶴は立ち上がって、おそらくは囲碁部顧問であろうその人を迎えた。
その人が自分を『椎名』と名乗った時の美鶴の受けた衝撃は言わずもがなである。
やっと、見つけた――いやしかし、偶然の一致の可能性も――期待して違ったら精神的打撃が大きくなる、確定するまでは期待すまい。
そんなことを考えて期待する心を抑えようとしたが上手くいかず、何となくぎくしゃくしてしまう。
反対に椎名はそんな美鶴の様子に緊張が解れ、いつのまにか最初の幸薄そうな雰囲気が無くなって、代わりに誠実そうな穏やかな物腰の先生といった表情を見せていた。
美鶴が、きっと良い先生なのだろうと思ったその時。
椎名の会心の笑みが炸裂した。
美鶴はその笑顔に打算があること等知らない。
美鶴は純粋に、散る寸前の桜の花を思わせる儚く可憐な笑みだと思いその美しさに見惚れ、いつの間にかこの人がSi-Naであれば良いと願っていた。
美鶴はわりと詩人であった。
共通点を探そうと椎名を質問攻めにした美鶴は、やがて椎名とSi-Naが同一人物であると確信する。
美鶴がMituruと同一人物だと気づかれた時には強く警戒されたが、偶然だと言うと簡単に納得され、リアルで付き合っていくことも了承された。
あれほど頑なにリアルで会うことを拒否していたにも関わらず、住所や携帯のアドレスを簡単に教えてくれた椎名に大きなギャップを感じたが、美鶴にとっては好都合だ。
――見つけたからには、もう逃がしはしない。
そして今日は、初めて椎名の家にお邪魔する記念となる日だったのだ。
椎名の手作り料理を食べて、誰にも邪魔されることなく対局し、文字ではなく言葉で直接検討しあえるのだ。
心を弾ませて今日という日を迎えた。
しかし椎名は不在で、やっと来たと思えば具合を悪そうにして知らない男に寄り添われている。
椎名に身体を密着させて寄り添うその男に何故か不快感を覚え、体調を気遣うと同時に男から椎名を引き離した。
男は山口と言うらしく、そういえば椎名の中学で会ったことを思い出した。
美鶴は、わざとらしくスキンシップを見せ付けたり鎌かけをしたりした結果、どうもこの男はホモなんじゃないかという考えに至り、この後椎名と二人になっ
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