暁 〜小説投稿サイト〜
碁神
料理は結構楽しいです。
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、タイトルホルダーになったところで結局椎名に勝てなければ意味は無かった。

Si-Naに会いたい。

そう思うようになったのはいつの頃からだったろうか。
初めて打ったときから会ってみたいとは思っていたかもしれない。
その思いは年々強くなっていった。
ネット越しの対局では分からないことがたくさんある。
直接向かい合って打ちたかった。

何度プロになることを勧めても椎名は首を縦に振らず、リアルの情報も断固として漏らさない。
椎名は美鶴に会う気が無かった。
それが、『お前なんかに興味無い』と言われているようで悔しかった。

『プロの世界で椎名と共に碁の高みを目指したい』

最初はただそれだけの願いだったが、過剰なまでに拒絶され続けることで思いは歪み執着となっていった。

――俺の唯一のライバル、そしてSi-Naにとっても俺は唯一のライバルだろう。 Si-Naの他に何も望まない。 Si-Naさえ居れば他には何も要らない。
だから――

――美鶴はSi-Naを探し始めた。

おそらく埼玉県在住で学校の教師をしているだろうということは分かっていた。 苦労して囲碁部を創部したことも言葉の端はしから掴んでいた。
子どもが好きだと言っていたことから、おそらくは小学校、大きくても精々中学校までだろうと目星をつけ、囲碁部のある小中学校を指導ボランティアと称して虱潰しに訪問していった。

実際に学校を訪問したことで、学校教師の良さが余計分からなくなった。
陰で鉄仮面の様だと揶揄される程表情に乏しい美鶴である。
そんな美鶴が、礼儀のなっていない煩いだけの子どもに笑顔を振りまくのははっきりいって苦行であった。
しかし、全ては椎名に会うためだと、忙しいスケジュールを調整し休みも満足に取らずボランティアを続けた。

『よう、姫さんは見つかったか?』

一年以上探して見つからず、疲労で身体が限界に達してきたある日、そんな言葉を掛けてきたのは南條だった。
椎名との初対局の時にPCを貸してくれた彼は美鶴の事情を知っており、『Si-Naはお姫様じゃないですよ』と言葉を濁す美鶴に笑いながら肩を叩いて一つのアドバイスをくれた。

『押して駄目ならたまには引いてみろ』

何時までも自分を子ども扱いする南條が美鶴は少し苦手になっていたが、Si-Naの事に関しては形振り構っていられない。
そのアドバイスに従い、Si-Naに謝罪すると、驚くほどSi-Naの態度は軟化し、その後でさり気なくリアルのことを聞いてみると、ポロポロと情報が出てくる。
南條には借りができたが、まだ訪問していない学校で椎名の漏らした条件に合う所は片手で数えられる程の数しか無く、椎名を見つけるのも時間の問題となった。

そして、ついに見つけたのだ。


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