第3部:学祭2日目
第12話『変転』
[9/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
文句を言ってきた。「なんでいきなり手を引くっていいだすの!? 今のお姉ちゃんにとって頼れるのは、秋山さんしかいないんだよ!!」
「だって、もう二度とあんな目には会いたくないし……。沢越止だって、桜ケ丘の生徒を無作為に襲ってるって話だし……」
澪の気持ちが、さらに沈んでいく。
自分の思いと、言葉の行方とがないまぜになって、板挟みの状態になる。
「私は……。どうすれば、いいのか……」
ますますどうすればいいのか、分からなくなってきていた。
「……心」言葉が心に話しかける。「秋山さんは今まで、私を助けにきてたんだから。
感謝しても足りないくらいなんだよ……。
本当は私一人で何とかすべき問題だったんだけど、秋山さんは、初めて会ったときから私を守ろうとしていた」
「お姉ちゃん……」
その場に、沈黙が流れた。
カタカタと電車の音が鳴り、続いて、警笛。
道行く人は、3人を全く気に掛けず、通り過ぎていく。
「桂……すまないな……」
うつむいたまま、澪は答えた。
「秋山さん、どうするんですか……?」
言葉はそっと尋ねた。
「いったん家に帰って、それから考える……」
精も根も尽き果てたというような、澪の声。
「……桂……」
言葉を見ると、良心がさらに疼いてくる。
「……ごめんな……。本当は、ずっと貴方のそばにいたかったんだけど……」
「……もういいんです……私が助けてほしいと言ってた時はもちろん、言わなくても、頑張って私の面倒を見てくれたんですし」
「そう……」
うつむき加減に、穏やかに澪は笑みを浮かべた。
今度の微笑は、自嘲も入っていた。
「でも最後まで……私を……守ってほしかったな……」
「…………行くね」
フラフラと、澪は、言葉を背にして、止に気づかれないように歩き始めた。
スカートのポケットの中で着信が何度もあったが、それに応対するどころか、気づく気配もない。
「心も、いい加減帰りなさい」
「お姉ちゃん、ほんと、大丈夫?」
「大丈夫だから、ね」
とはいっても、声にかすかな震えがあることに、心は鋭く感づいていた。
「お姉ちゃん?」
「ん?」
「必ず、帰ってきてね。お姉ちゃんがどんなになっても、お姉ちゃんは、私のお姉ちゃんだから、ね」
思わずおかしさがこみ上げた言葉。
「まるで、私が二度と帰ってこないかのようなセリフね」
言葉は、一人になった。
やせ我慢の糸が、切れていた。
誰にともなく、呟いていた。
「どうして……こうなるの……? 私なんて……いなく……なっちゃえ……」
呟いているうちに、なんだか妙なおかしさがこみあげてきていた。
「あは……あはは……私なんて……いなく……なっちゃえ……」
周りは、恐怖と奇異さが混じった目で、言葉を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ