第3部:学祭2日目
第12話『変転』
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のまま、澪と言葉、心を背にして、榊野ヒルズの方へ向かった。
唯の手を引っ張って駈け出す誠。
ちょうどそこに、電話が入る。
「はい?」
「あ、もしもし伊藤か? 放課後ティータイムの田井中律だ!」
「田井中さん……」
「唯は無事か?」
一番問題となることを聞いてきた。今が大変な時。
「……幸い、朝、俺んちに来てくれましてね。とりあえず親父には何もされてないみたいです。
ただ、今親父に見つかってしまって。急いで逃げているところです」
やっかいだなあ。携帯の奥のくぐもった声が、今の彼にはよく聞こえた。
「……ったく、あんたの親父もしつけえなあ」
「ほんと、すみません」
「しかし、まあ、言っておこう。ムギが止を勾留しようと、榊野学園に何人もSPを用意していた。そちらの方に止をおびき寄せてくれ」
「そうですか……分かりました。ありがとうございます」
彼の胸に、どこか安心感と同時に、申し訳ない思いがもやっと上がった。
何かしないと……。
そんな思いもあったのだろう、誠は澪のことを話してしまっていた。
「田井中さん、ちょっといいですか?」
「ん?」
「実は、秋山さん、もうこの争いから、言葉からは手を引くって言ってるみたいなんです……」
「は?」
「どうも榊野の生徒達に何かされたらしくて……。もう痛い目にあいたくないといったような感じでした」
「はー!?」電話の奥の律の声が、荒くなってしまう。「こんちくしょー! 私がファンクラブに助けを呼んだ意味ねえじゃねえか!!」
「助け? ファンクラブ? どういうことですか?」誠は尋ねがらも、「まあとにかく、今の言葉には秋山さんが必要だと思いますから、何とかなりませんか?」
そうこうしている間に、2人はプラットホームにたどりつく。
「あ、電車が来ました。切りますね。」
焦って携帯を切り、折から来た銀色と緑の電車に、あわてて乗り込む。
あたりを見回し、父親がいないことを確信して、ようやく誠は一息ついた。
それと同時に、電車のドアが閉まり、動き始める。
唯は…………。
誠の一連の行動があまりにも速く、わけがわからない状態だった。
だが、少なくともあの男から、自分を守ろうとしているんだということを、すぐに理解していた。
「マコちゃん……」
「ん?」
「ありがとうね……」
唯はぽつりと囁いた。
誠は、唯になんと言ったらいいのかわからなかった。
電車は少しずつ、速度を速めてゆく。
止がプラットホームに駆け上がる姿を、彼女は偶然目にとめた。
電車が動いているのを見て、唯は安心感を覚えた。
残った澪、心、そして言葉。
「伊藤の奴……」
澪はあさっての方向を向きながら、呟いた。
「秋山さんっ!!」心が澪に、
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