第3部:学祭2日目
第12話『変転』
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」
「唯ちゃん……」
唯の痛々しい顔が、誠にとっては切なく思えた。
どっちを取っても、最悪の結末しかないように感じられた。
「まあ、」こんな状況になっても、刹那は飄々としている。「同情で付き合っても長続きしないからね。伊藤、自分の気持ちで決めなよ」
言葉と誠の間に入りながら、アドバイスをする。
「俺は……」
この先の言葉が、やはり出てこない。
誰もせかすような発言もしない。
その場で沈黙が、5分ほど続いた。
唯も言葉も、息をのんで誠の答えを期待していた。
電車のアナウンスと、鉄道の音が響いて少し。
ふと、聞こえた声。
「いた!」
聞き覚えのある声。
誠は思わず、ぞくっとなった。
まぎれもない、沢越止。
入口付近のファーストフード店で、革ジャンと長髪をなびかせている。
「しまった!」
誠は焦った。
何でここにいるんだ。
「唯ちゃん、行くよ!!」
「え、マコちゃん……」
戸惑う唯の手を、誠は強引に引っ張っていく。
「ごめん、やっぱり親父に狙われている唯ちゃんを助けたい」
皆に言い聞かせて去ろうとする2人。周りは一瞬、面喰っていたが、
「誠君!」
少々打ちひしがれている言葉だけが、声をかけてきた。
しかしその目は、真剣。
「言葉……」
「誠君と最初に付き合ってたのは、私ですよ。沢越止さんと同じ道を歩みたくないなら、最初に付き合っている人を裏切ったりしないですよね!?」
誠は、はっと胸をつかれた。
無意識のうちに、ブローチと指輪を取り出し、
それを言葉の右手に持たせていた。
思い、分かってくれるかな……。
誠は強く思って仕方なかった。
「誠君……」
こちらの思いをわかってくれたかどうかは、分からない。
しかし言葉の発した声には、鬱と失望が七三ほど含まれていた。
「くそ、逃がすか……」
止は、急いで唯と誠を追いかけようとするが、袖をがっとつかまれる。
世界だった。
その目に怒りの炎がある。
「知ってるんだよ。私は貴方の子供だって……。
なのに、お母さんを捨てて……。
貴方は一体、何なの……?
なんで私は貴方に捨てられなければならないの……?」
「知らないな」
止はまるで他人事のように言い、世界の手を払いのけると、急いで改札口を潜り抜けた。
「榊野ヒルズに、貴方の知り合いがいたんだね……」
刹那の言葉に、止は足を止めて振り向き、
「何故知っている……?」
「別に。ただ言ってみただけですよ」
彼は図星をつかれたといった表情になったが、すぐに気を取り直してプラットホームへ向かう。
「………………」
世界は、顔がくしゃくしゃになっている。
「……行こう」
刹那が彼女に、手を差し伸べる。
そ
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