第3部:学祭2日目
第12話『変転』
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ている。
「……ったく、甘露寺は何様のつもりなんだか」
律はぼそりとつぶやく。
「律先輩」梓は苦虫をかみつぶしたような顔で、「なんだかやっかいですね」
「いまさら何を言ってるのさ」律はため息をつく。「こんな入り組んだところに、すでにはいってるんだから」
「何で甘露寺は、あれだけ桂に嫌がらせを繰り返そうとしてるんでしょうか……」
「さあ……。桂も、あまり榊野ではいい噂を聞かないからなあ……。まあいいさ、あくまで桂と私らは、中立だからよう。澪に任せればいいさ。さて、伊藤に電話しますか」
今まで黙っていた憂の表情が、目に見えて不安を帯びる。
「お姉ちゃん、大丈夫ですよね」
「まあ、伊藤がかくまってるとするならな。まずは居場所を何としてもわからないとな」
3組の喫茶店で、七海は彼氏と落ち合うことにしている。
もどってみると、殺風景な部屋にも関わらず、中は多くの生徒達がたむろして賑やかだ。
「鈴木、そっちの方をお願い」
「うん」
ちらりと見ると、友人の光が、なぜか見知らぬツインテールの少女にあれこれ指揮している。
「光、何やってんの……それにその子、桜ケ丘の子でしょ?」
ツインテール少女のエプロンの下にある制服は、桜ケ丘のもの。
それを見て不審に思い、七海は光に尋ねた。
「ああ、この子は鈴木純って言って、確かに桜ケ丘の子。でも私の家のケーキの試食コーナーを全部食っちゃったから。食うだけ食って買わないと。これは罰」
光の家は洋菓子屋で、レモンカスタードケーキが名物。試食コーナーも使って大いに宣伝していたのを、純がひとつ残らず食べてしまった。
「だって」純は指をつんつんしながら、「黒田んちのケーキって、あまりに美味しかったんだもん……」
「罰、ね……」ひきつり笑いをする七海。「まあ、伊藤や世界や澤永や刹那が休みで、大変なのも分かるけどさ……」
「うるさい、今日も猫の手を借りたいほど忙しいんだからね。止って奴か知らんけど、それを捕まえるとか言ってへんなオッサンも来ているし。
澤永の奴、ほんと何やってんのよ……」
「案外さ、好きな女の子持って帰ってるんじゃない?」純はあっけらかんと言う。「んでもってキスしたり、あんなことやこんなことしてるとか」
びくん!
光が色めきたった。それを七海は感じ取って、
「余計なこと言うなよ、鈴木……」
「あ、そうなの? ははは……ごめんね。」
が、すでに遅かった。
光は控室にあわてて戻り、教室の壁に、頭突きを繰り返している。
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛…………!!」
喫茶店中に、彼女の蛙声が響き渡った。
皆、びくりと声のする方を見た。
8つほど券売機のある、駅としては比較的大きな榊野町駅構内。
構内アナウンスが、大きく流れる。
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