第3部:学祭2日目
第12話『変転』
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先輩が好き……って、昼ドラみたいだよ……」
「伊藤の親父もロクデナシか……。厄介なものだな」
七海は一つ、息をつく。
「あ、律先輩!!」
梓の声。
左手の階段から、律と憂が駆け足で階段を上ってきていた。
多少眉にしわが寄っている。
大雑把でいい加減な部長の、あまり見せない表情を見て、梓はドキリとなった。
「梓、甘露寺……」
律もこちらに気づいたようだ。
足を速めて梓と七海のところにたどりついた。
「甘露寺、あんたに聞きたいことがある」普段見せない、律の真剣な視線。「なぜムギを裏切った?」
「知ってるんですね……」
七海は認めるだけで、はっきりとは答えない。
「桂が気に食わないのは私も同じだ。だが、なぜムギを脅して、いじめの片棒を担がせようとした?」
「そうだよ。なぜムギ先輩を?」
「……味方を作っておくに、越したことはなかったからですよ」
妙に開き直ったかのような発言だ。
「味方……」
「あのデカ乳女に、いいとこはとらせたくないからねえ。なんとしても世界を幸せにしたかった」
「…………」
「でもまあ、世界が平沢さんのことを応援したいというのなら、素直に従うしかないですよね……」
七海は、空を仰いだ。
「……もっといい方法があったと思うけどな」律はため息をついて、「せっかくあんたがHTTファンクラブに入ってくれたのに……。正直、ファンクラブに入った人たちとは、わけ隔てなく接したかったのに……」
「悪いのは全部私ですよ。ムギさんを無理に仲間に引き入れたことは」妙に潔い返答だ。「ムギさんのことでどうしても私が許せないなら、除名してもいいです。ただ、世界や光はいさせてやってくれませんか?」
「……まあ、西園寺や黒田は何もしてないしな。とりあえず、これからのこと、桂とのことはじっくり考える。」
律は不本意ながら、うなずくしかない。
「まあ今は、私も止から唯を守らなくちゃいけないからよう」只でさえぶっきらぼうな、律の姉御口調がさらにぶっきらぼうになった。「後でムギに謝っといてくれ」
七海はとりあえず、うなずいて生返事をした。
急に電話が鳴って、七海は、携帯を取り出す。
「あ、もしもし! あ、恭一!! なに、是非ともしたい……とはいっても、ムギさんのSP達が休憩室にいるからなあ。いい下着はいてきた?」
どうやら彼氏と話をしているらしい。
「なんとかあのSPに、立ち退いてもらうよう頼むとするか」
しゃべりながら、七海はどこかに行ってしまった。
「ああやって重点配備しても、必ずどこかでほころびが出るんだけどな……」
そう呟きながら。
律、梓、憂が、後に残った。
他の生徒達も、3人を気にせず、めいめいそれぞれの話をしている。秋風が紅葉を飛ばし、秋らしい風景を作っ
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