第3部:学祭2日目
第12話『変転』
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そばに居続けることで、唯の純粋な思いが穢れていくのではないか……。
自分を思い続けるあまり、他の人のこともどうでもよくなって……。
ありえない。とは思った。
しかし、そういう思いがこまつぶりのように回転していた。
「マコちゃん?」
唯が目を丸くして聞いてくる。
「……何でもない。」
誠はこれだけ、答えた。
「平沢さん……」刹那が、唯に小声をかけた。「伊藤は、平沢さんの純心さを好きになったんだと思う。
だから、自分の欲を出しちゃダメ」
「…………」
唯は、刹那が何を言っているのか、よくわからなかった。
「純心?」隣の世界が、刹那に声をかける。「なぜわかるの?」
「なんとなくはね」刹那は無表情。「もうこのことは、世界を傷つけるから関わらないようにしてたんだけど、どうしてもほっとけないんだ」
「そう……」
世界は苦笑しながら、小走りの誠についていく。
誠は、
「親父が来てないといいけどな……」
と独りごちた。
用務員が携帯で、こんなやり取りをしていることには気付かなかった。
「もしもし、はい……。え、平沢唯? ショートボブで桜ヶ丘の学生服……。
それらしい人はいましたよ。榊野町駅に向かうみたいです……」
物々しくムギのSPが配置された、榊野学園。
道行く人々は、桜ケ丘生徒も榊野生徒も、窮屈な思いで通っている。
「まだ沢越止は、来てませんね」ムギはSPと連絡を取り合いながら、注意深く様子を見ていた。「休憩室は?」
「休憩室は、生徒たちが行為をする場所だから、あまり位置してほしくないと言っていますが……」
「何いってんの! そういう人目に付かない場所こそ危険でしょ!!」
ムギが珍しく怒鳴る。
「まあ、確かに……」
SPのリーダーは、あわてて配備につく。
ムギは、それぞれのSPが配置した位置を確認していた。
「とりあえず、休憩室には2人入って」
びしばしと、手厳しく指示をしていく。
「何としても、止を止めないと……」
ただでさえ鉄とコンクリートで殺風景な教室の中に、SPが立ち並ぶ。
生徒たちは唖然とした顔で、ぞろぞろと歩いている。
2階で七海と梓は、後ろ手で見張っているSPの横をこそこそと通り過ぎながら、話をしていた。
長身の七海と小柄な梓は、傍から見ると大小の漫才コンビといった外見。
しかしその雰囲気は、シリアスだ。
「ほんっと、ムギさん張りきってるな……」
多少皮肉を込めて、七海はつぶやいた。
「何としても、止に好き勝手させたくないんだろうねえ。唯先輩も止に狙われてるし」
七海の横で、梓は手を顎に当てて解説する。
「平沢さんもかい? 平沢さんは、伊藤が好きなんだろ?」
「そうだけど、止は伊藤のお父さんで、彼は唯
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