第3部:学祭2日目
第12話『変転』
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! ちょっかいを出すのはおかしいよ!! 仲良くしないでよ!!」
「違うの、私は……」
「2人とも、」誠は唯と心を諌めると、「俺はな……」
ところが、後の言葉が、どうしても出ない。
すると、唯のしがみついてない方の腕に、ぎゅっと心が抱きついてきた。
「心ちゃん……」
「お姉ちゃんのところに、戻ってよ……」
怒り心頭の表情だが、目だけはなぜか涙をにじませている。
「……唯ちゃん。とりあえずプラネタリウムは後にして、言葉のところへ行く。」
唯はチクリとなった。
この妹さんの言う通りにすれば、誠との2人きりの時間が短くなるのは確かだ。
でも、言葉も……。
心配だ。
「……わかった。いいよ」
自分ではその意識はなかったが、口調に不満が出てしまっていた。
「………………」
誠は、その不満げな口調と、彼からそむけた視線を見て、妙な悪寒のようなものを感じた。
まるで、自分の求めているものが、消えてしまうような……。
「いたいた」
声がしたので、皆、そちらを向く。
まぎれもない、世界と刹那。
「世界、それに、清浦……」
「何だか、ここで修羅場ってたって聞いたから」刹那は相変わらずのクールっぷり。「だいぶアツアツだよね」
「そう? やっぱり?」
「清浦、余計なことは言わなくていい」
紅潮して笑う唯に対し、誠はちょっと恥ずかしげに片手を出して懇願した。
「何があったの?」
相も変わらずの無表情だが、刹那の目はいたって真剣である。
誠が前に進み出て、今までのいきさつを話す。
言葉が何者かに襲われていること。彼女が誠を待っていること。
「桂さん、か……」黙っていた世界が、つぶやく。「桂さんがやってきたら、平沢さんと誠は、二人きりの時間を楽しめなくなっちゃうよ……」
「私も」唯は落ち込み気味の表情になり、「それは辛いけど、やっぱり桂さんも心配だし……」
「優しいよね、平沢さんは……」
「普通だよ」
唯は苦笑いをする。
「貴方が笑えば、私も笑える。そう思ったんだけどな」
世界はつぶやく。
「とにかく、行くか」
「でもどこに?」
「実はさっき」心が口を開く。「お姉ちゃんにメールしたんだよね。榊野ヒルズで誠君と落ち合ったって」
「じゃあさ」誠がいのいちに、「榊野町駅の改札口で待つということにしようよ」
誠はそう言って、言葉にメールを送った。
「マコちゃん……」
唯が誠の目をまっすぐ見て、潤んだ瞳で話しかける。
「唯ちゃん……」
「あのね、桂さんが無事でも、そうでなくても、そばにいてね。
私、マコちゃんのことが好きだから……。
マコちゃんは、私の一部だから」
懇願が少し混じった声であった。
ふと、誠の中に、アブのような思いが入り込んだ。
自分の
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