暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第3部:学祭2日目
第12話『変転』
[1/11]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 白いレンガをあしらったかのような壁に、3つのカウンター。背後には、滝がざあざあと音を立てている。
 ここは榊野ヒルズの最上階だ。

「もう開いているのか」
 20人くらい並んでいる列の最後尾に位置して、誠は呟く。
「あれえ、マコちゃん知らないの? 榊野町のプラネタリウムって、8時からすでに開園するんだよ」
 誠の利き腕にしがみついている唯が、したり顔でしゃべる。
「……知らなかった。唯ちゃん初めてなのに、俺よりヒルズのことを知ってるって、どういうことだろう。」
「私もチェック入れてたからねえ。いつか一緒に行こうって思ってたところなんだ」
 唯は、にっこりと笑った。
「そうか……。とはいえ、この分だと30分ぐらいは待つな……」
「ま、とりあえずニンテンドーDS持ってきたから、やってみない?」
「あはは、参ったなー……DS今回持ってきてないんだよ……」
 誠は困り顔。
「いいから! 見てるだけでも楽しいもんでしょ?」

 唯が笑いながら、ニンテンドーDSを取り出そうとした時、
「誠君っ!!」
 突如背後から、大声がしたので、2人ともそちらを向く。
「……心ちゃん」
 振り向くとそこには、小学5年生ぐらいのセミロングヘアー、髪を触覚のようにまとめている少女。
 まぎれもない、桂心であった。
 2人の中に、どす黒い靄が入ったような気がした。


「どうしてここにいるの!?」
 心が2人を睨みつけて叫ぶ。
「それは……」
 誠は思わず、目を伏せた。
 まわりが彼女の話を聞いているのか、ちらちら視線を向けてくる。
「……心ちゃん、とりあえずここだと人目につくから、場所を変えよう。」
 誠が進めてくるが、
「だめっ! ここで話すのっ!! 大事なことなんだから!!」
 心は意固地になって、言うことを聞かない。
 周りは「修羅場だ修羅場だ」などと騒ぎ立て始めた。
 いちかばちか、誠は心の腕をグイッと引っ張り、強引に人気のないところへ行く。
 唯も、心の後からついて行った。


 青いタイルが鮮やかな、男子トイレの入り口。
 ここなら通路もせまく、人目につきにくい。
 1人の用務員が、モップがけをしているだけ。
 気のはやる心を誠は抑え、彼女の不満を受け止める準備をする。

「お姉ちゃん、大変なんだよ!! 同級生に絡まれて!! なのになんで誠君は、違う人と付き合ってるの?」
「心ちゃん……。それは……」
「お姉ちゃんが可哀想だよ!! そっちのお姉ちゃんだって仲良くしないでよ!! お姉ちゃんの彼氏は誠君なんだよ!!」
「そっちのお姉ちゃん、って……」唯は苦笑いしながら、「一応平沢唯って名前があるから、そうやって呼んでくれる?」
「じゃあ平沢唯、誠君の彼女は、うちのお姉ちゃんなんだから
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ