第51話 非力な両手
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「じゃあ『花道・オン・ステージ』ってのは」
「『Knight of Spear』ってのも」
「私の趣味だ。いいだろう?」
凌馬はやっとふり返り、咲と同級生の男子とそう変わらない笑みを浮かべた。
(いいだろ、と言われても……正直変身する時って大体必死だったから音気にしたことなかった)
正直に告げると凌馬の機嫌を損ねて紘汰たちへの対応も変わるかもしれないから、言わないが。
「それじゃ、あたしたちのことを実験体扱いしてきたのも、あなただったのね」
「実験体?」
これについて知らない戒斗は訝しげにくり返す。
「黒影が量産できたのも、白いアーマードライダーが強くなってたのも、俺たちから集めたデータのせいだ」
「本当に何もかも仕組まれていたのか――ふざけるな!」
戒斗がパイプ椅子を蹴って立ち上がり、凌馬に掴みかかろうとした。
だがそれより速く、凌馬と咲たちのちょうど間に控えていた女が、戒斗の顔面に後ろ回し蹴りを食らわせた。その上、戒斗に駆け寄ろうとした紘汰の腿を蹴り、その場に膝を突かせて腕を後ろ手にねじり上げた。
「やめてやめて! 二人ともケガしてるのに!」
咲は女の腕に掴みかかり、ぶら下がった。
「どきなさい」
「やだ!」
女は溜息をつくと、咲がしがみついた腕を思いきり振った。反動で咲は投げ出され、戒斗と紘汰の間に尻餅を突いた。
「湊君。お手柔らかにね」
「はい。プロフェッサー凌馬」
女はにこやかに答え、元の立ち位置に戻って行った。
(高くて、女の子みたいな声。このプロフェッサーって人と同じで、なんかどっちとも……幼い? 感じだ)
「あんたの実験に巻き込まれたせいで、初瀬はあんな姿になって――!」
「まず誤解があるようだが!」
紘汰の語尾に被せるように凌馬は声を上げた。
「私の担当はベルト開発だけだ。そのためのデータ収集はうちの主任が考えたことだよ。それと初瀬……亮二君? 彼については、不幸な事故だったとしか言い様がないな。果実を口にした時点で人間としての彼は死んでいた。果実に体を乗っ取られ、モンスターになっていた」
どこで読点を打っているのか分からないしゃべり方をする凌馬に、今度は紘汰が殴りかかろうとした。
それを止めたのは戒斗だ。
「今はこいつにしゃべらせろ」
「〜〜っ戒斗!」
「俺たちは知る必要がある! あの力の正体を。使い方を。倒すべき敵を倒すためにな」
戒斗がパイプ椅子に座り直した。
紘汰は一度唇を噛みしめ、パイプ椅子に戻った。咲も内心慌てて紘汰に続いてパイプ椅子に座った。
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