第三章:蒼天は黄巾を平らげること その6
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る。皆いいやつだよ。この軍に入ってきて良かった事は、仲間に恵まれている事だな。本当にそうだ。いいやつばかりだよ。
・・・詩花。今日は早めに寝ておいた方がいいぞ。夜更けには総攻撃だ。今のうちに英気を養え」
「それは勿論分かっているわよ。そのためにたくさん力を補充してきたし。ま、それとは別にね、ちょっと話したい事があるんだよね」
「もったいぶるってまで話すような事か?まぁいいけど・・・なんだ?」
「・・・乱が鎮圧されたら、世の中は一先ずの平穏を迎える。その後も曹操に忠義を尽くす気なの?つまりね、曹操の配下として身を捧げる気?」
「ああ。そのつもりだ。試しているのか確認したいのか知らないけど、俺の心は変わっていないぞ。これからの時代の主役となる人達と、一緒に戦場を駆ける。自分の生きた証をこの大地に残す。俺にとっては何よりもそれが一番で・・・あれ、靴が結構ぼろぼろになってるな」
「この前、桂花ちゃんに足をひっかけられて派手に転んだでしょ?思いっきり靴が地面を掠めていたから、その時にできたんでしょうね。いつ交換するんだろうって思ってた」
「気付かなかった。身の回りのものに案外だらしがないんだな、俺って」
「もっと敏感になった方がいいわよ。些末な事でも後になれば大事になることだってあるんだから」
ーーー特に女なんか。
思わず靴にやっていた視線が硬直して肩がぎくりと震え、ついでに息を呑み込んでしまう。なぜだろう。視界の端にある女性の温もりがひどく恐ろしく見えてしまう。
固まっていた仁ノ助の頭を錘琳はがしりと掴み、無理やり自分の方へと向けさせる。口元は笑っているのに目は皓皓として直視に耐えない。しかしがちがちと頭を掴まれているためにそれができない。鬼畜少女、錘琳は冷ややかに続ける。
「隠しているつもりなの?私には分かっているわよ」
「なんだよ、そんな目をして。疚しい事なんて俺は・・・」
「孫堅」「・・・申し訳ありません!軽率過ぎました!」
木箱を蹴飛ばして仁ノ助はその場で土下座した。一瞬呆ける錘琳。仁ノ助はただ頭を地面にこすりつけて、誠意を表す。
「戦いが終わった後、俺はどうしようもなく興奮していた。命のやり取りをする中で血が湧き立って、頭がぐらぐらしていたんだ。それでその滾りを抑えようとするよりも先に、背徳を犯してしまった。俺が完全に間違っていた。
この件に関しては孫堅殿は悪くない。あの人は俺に対して優しさを見せてくれたんだ。戦場を共にした事や、彼女を戦地で助けた事に対して。事に及ぶ切欠というのも彼女からの誘いだ。だがそれは言い訳にならない。頭が働いていれば、今がどんな時期であるか考慮できたいたのに、俺はそれをしなかった。本当に、駄目な男だと思う」
「まったくよ。仮にも!孫堅は漢室を守る武門の誉れであり、
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