第四章
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「この暑さで何言ってるのよ」
「お母さんちょっとイライラし過ぎよ」
「そうよ」
その彼女に適当にゲームをしてだらしない服装と格好でいる娘達が言ってくる。
「幾ら暑くてもね」
「イライラしたらよくないわよ」
「もっとリラックスしないと」
「余計に暑くなるわよ」
「あんた達は家事をしてないでしょ」
だからだとだ、野菊は娘達に怒った顔で言い返す。
「しかも四人共何よその格好」
「クールビズよ」
「いいでしょ」
「下着姿じゃない」
見れば四人共だった、ブラにショーツだけだ。それぞれ明るい色の下着である。
「お母さんいつも言ってるでしょ、何時お客さんが来るかわからないから」
「お家の中でも服を着ろっていうのね」
「そうなのね」
「そう、だからね」
すぐにだ、服を着ろというのだ。
「幾ら何でも年頃の女の子が下着姿でいないの」
「お母さん厳し過ぎ」
「こんなの普通じゃない」
「そうよね、皆お家じゃこうよね」
「下着よね」
「いいから服を着るの」
見れば野菊は丈の長い白く薄い生地のワンピースにエプロンだ、長い黒髪を後ろで束ねている。その格好で言うのだ。
「いいわね」
「そんな格好だから余計に暑いのよ」
「別に下着でもいいのに」
「そうそう、リラックスリラックス」
「気軽にいかないとね」
「夏でもちゃんとしなさい」
また娘達にこう言う、そして怒れば怒る程だった。
余計に暑くなる、自然と冷やした麦茶を飲む量は多くなり一旦お茶を沸かしても暑くなる。外に買い物に出るとうだる様に暑い、それはまさに。
「いつもサウナにいる気分よ」
「夏痩せしていないか?」
健一はぼやく妻にビールを飲みながら声をかけた。
「ちゃんと食べてるよな」
「何とかね」
「素麺をか?」
「お昼はいつもそれよ」
「食欲もないんだな」
「暑いから」
それでだとだ、野菊は疲れ果てた顔で夫に答える。
「どうにかならないのかしら」
「そうは言ってもな」
これが夫の返答だった。
「夏だからな」
「猛暑日の記録更新しそうなのよね」
「夏の間ずっとらしいな」
「もう沢山よ」
夏の暑さ、それはというのだ。
「早く終わって欲しいわ」
「本当に辛いんだな」
「辛いから言うのよ」
見事な返答だった、野菊はもう言葉を飾る気力もなかった。
「どうしたものかしら」
「だからせめて栄養をな」
「お素麺だけじゃなくて」
「野菜ジュースでも飲め、ビタミンを補給しろ」
「あと牛乳よね」
「豆乳とかな、とにかくそのままじゃ駄目だ」
妻の夏痩せを見てだ、健一はこう言うのだ。
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