第一章
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金木犀
暑い、とにかくいひたすら暑かった。
この年の夏は異常なまでに暑かった、日本各地で最高気温を記録し熱帯夜が何時までも続いていた。そんな夏だった。
しかもその夏にだ、金沢野菊はというと。
多忙だった、何しろ家には夏休みで子供達がいるのだ。しかもその子供達がよりによってなのだ。
「何で皆女の子なのかしらね」
「そんなの私達に言われてもね」
「ねえ」
「そこまで知らないわよ」
「責任持てないから」
女の子が四人だ、彼女が夫との間にもうけたのは。その女の子四人が全員家にいてそれで、なのである。
めいめい友達を呼んだりあれが食べたい、これが食べたいだ。しかも料理好きなのはいいのだが料理の後が随分と汚い。その後始末は全部野菊がしている。
それでだ、野菊は娘達に言うのだ。
「お料理をするのはいいのよ」
「結婚に有利だしね、料理上手は」
「だからよね」
「後片付けもしなさい」
娘達に言うのはこのことだ。
「それをしなさい」
「そんなのいいじゃない」
「ねえ」
娘達は不満そうな顔でお互いに話す。
「お料理してるんだから」
「そうよね」
「お料理は後片付けまでしてからよ」
野菊は怒った顔で娘達に言う、顔はまだ若く髪も白いものはない。長く伸ばしそしてよく櫛でといでいる。目元にも皺はない。
だがそれでもだ、眉間には皺を作って娘達に言うのだ。
「食器も洗ってね」
「えっ、食器も!?」
「食器洗わないといけないの?」
「手が荒れるのに」
「それに面倒臭いわよ」
娘達は家のリビングでそれぞれ寝転がってゲームをしたりオセロをしたり漫画をしたりしながら母に言うのだった、皆半ズボンやタンクトップでアイスなりキャンデーを舐めながら遊びつつだ。
そのうえでだ、如何にも嫌そうな顔で言うのだ。
「だからね」
「皿洗いとかは」
「別にいいじゃない」
「そうよね」
「よくないから言ってるの」
まだ言う母だった、口を怒らせて。
「全く、お料理をしてもね」
「お掃除とかしないと駄目なの?」
「食器洗いも」
「食器も洗ってね」
そしてだというのだ。
「拭いて元に戻しなさい、それによ」
「それに?」
「それにっていうと?」
「あんた達のお部屋のお掃除もよ」
それもだというのだ。
「ちゃんとしなさい」
「えっ、それもなの!?」
「お掃除もなの?」
「そんなのしなくていいじゃない」
「そうよね」
娘達は掃除と言われて余計に嫌そうな顔になった、まるで目の前に全裸のおっさんが出て来たかの様に。
「別に困ってないし」
「何処に何かあるかわかってるし」
「だからね」
「別にいいわよね」
「汚いからよ」
野菊はこのことも眉間に
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