第46話 悲劇へ向けて
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月花が駆けつけた時、紘汰は変身を解いていた。
紘汰はヘキジャインベス――初瀬を説得しようとしている。そんな姿を見せられては、月花も攻撃をためらわざるをえない。
「な、初瀬。お前は今、病気だ。一緒に病院へ行こう」
『グゥゥ――』
「初瀬ッ!!」
紘汰の叫びが届いたのか。ヘキジャインベスは頭を抱えて悶え、近くの資材にぶつかって倒れた拍子に初瀬に戻った。
固唾を呑んで見守っていた月花は、胸を撫で下ろした。
紘汰も笑顔になり、蹲る初瀬に手を伸べる。
「な、病院へ行こう。きっと治してもらえる」
紘汰の手が初瀬の肩に触れた瞬間、初瀬は紘汰の首を掴み上げた。初瀬の右手は鉤爪化していた。初瀬はその爪で紘汰を斬りつけた。
「やめて!」
月花は初瀬の腰に飛びついて、初瀬を紘汰から引き剥がした。月花と初瀬はもつれあって砂利の上に倒れた。
「フウ! ヴゥゥ!」
紘汰が来て、月花と一緒に初瀬を押さえ込む。傍目にはさながら暴れる患者を押さえつける看護士のような光景だっただろう。
だが、二人がかりで押さえようとしたのがまずかった。初瀬は再びヘキジャインベスに変容し、月花も紘汰も振り解いて逃げ出してしまった。
咲は倒れたままで急いで変身を解いて、スマートホンを出し、逃げて行くヘキジャインベスの写真を撮った。
「紘汰くん、だいじょうぶ!?」
咲は倒れた紘汰に駆け寄って横にしゃがんだ。
「…はせ、が…」
「だいじょうぶ。みんなに探してもらうよう、たのむから」
先ほど撮ったヘキジャインベスの写メを、リトルスターマインのチームメイト全員に一斉送信すればいい。事情がややこしいので、「このインベスをみかけたら、しらせて。あとにげて」とでも文を添えて。
「そんな危ないこと…」
「今は紘汰くんのがあぶないよ! 病院に行こう? ケガ、治してもらいに行こ? ね?」
紘汰は弱々しく首を横に振った。
「病院は、だめだ。俺たちは、ビートライダーズだ。行ってもきっと……」
「あ……」
インベス事件の奇病で病院はどこもパンク状態。そして市民のバッシングはビートライダーズに向かっている。そんな中で病院に行っては、患者の身内に何をされるか分からない。世間が擁護派と反発派に割れようが、病院はほとんど反発派だろう。
「俺のことより…初瀬を、探さねえと…」
紘汰は立ち上がる。肩を貸したくとも、小学生の咲では身長が届かない。自分がコドモであることをこんなにも許せないと思ったのは初めてだった。
歯を食い縛って立ち上がり、スマートホンのメール画面を立ち上げる。インベス探しを頼むメールをチームメイトに送信してから、咲は前をふらつきながらも行く紘汰を追
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