第四章
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「特に何も」
「そやったらうどんにする?」
「大阪のうどん美味しいで」
「安うて量も多いさかいな」
「それにしよや」
「うどんですか」
薫はうどんは好きだ、そう言われてだった。
すぐに先輩達の話に乗った、それで難波のうどん屋に入って食べると。
その窓の隅に花があった、その花は。
チコリだった、薫はそのチコリを見て先輩達に言った。
「このお店チコリを飾ってるんですか」
「ああ、そやな」
「このお店のおかみさんお花好きやし」
「そういえばこの青いお花いつも飾ってるわ」
「そうやったな」
先輩達もその花を見て言う。
「綺麗なお花で何やろって思ってたけど」
「チコリっていうんやな」
「青くて綺麗なお花やな」
「そやな」
「そうですか、このお店にもですか」
薫は和風の店の中に置かれているその青い花を見つつ微笑んで言う。
「いいですね」
「味も値段もええさかいな」
「ほなけつね食べよ、けつね」
「このお店けつねうどんが一番美味しいさかい」
きつねうどんのことだ、大阪の言葉ではなまってけつねとなるのだ。
「皆で食べよな」
「難波には他にも美味しいお店が一杯あるさかい」
「明日もこれからも紹介するわ」
「楽しみにしてや」
「はい」
薫はそのチコリを見て微笑みながら先輩達に応えた、その花を見てそれまでの不安が、先輩達の気さくさと明るさでかなり弱まっていたそれが完全に消えていくことを感じた。
薫は出だしを快くはじめられた、そして。
自分のロッカーにあるものを飾った、それはというと。
小さな花だった、それをドライフラワーにしたものだ。その花もだ。
「ああ、チコリやん」
「薫ちゃんがうどん屋さんで見たお花やな」
「それロッカーに飾るん」
「そうするんやな」
「はい、私このお花が好きですから」
だからだとだ、先輩達に明るい笑顔で話す薫だった。
「このお花をいつも飾ってるんです」
「何かお守りみたいやな」
先輩の一人がここでこう言った、そのチコリのドライフラワーを見て。
「そのお花」
「そうですね、自分のお部屋にも飾ってますし」
「そうしてるんかいな」
「そうです、そうしています」
「ほんまお守りやな。けどお花のお守りかいな」
ここでだ、こうも言う先輩だった。
「ええな、それも」
「そうですね。私も」
薫は微笑み先輩に話す。
「このお花があれば」
「頑張れるんやな」
「そうなんです、今までそうでしたし」
「それでこれからもやな」
「頑張っていきます」
そうするからだというのだ、それが為に。
「このお店で」
「そうか、ほなお守りと一緒に頑張りや」
先輩は薫のその背中をとん、と叩いて明るい声をかけた。薫はこの日から店にもチコリを飾って
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